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「退院おめでとう〜〜!!!るな!!」
「ありがとう!るいのおかげだよぉ〜」
私は退院した後、すぐさまるいの家に駆けつけた。
あの電話はもちろんの事覚えているが。
――するとるいは、笑顔で私とハイタッチを交わしてくれた。
「よし、またデートするか?」
「するする!明日する!」
るいと歩いて、心を落ち着かせたかった。
まだ「歩く」事にも不慣れな状態だしね。
「…明日か?」
るいは欠かさず、カレンダーをチェックした。
私も視線をそちらに向けた。
明日の予定のところには、赤字で「重要」と書かれていた。
「ごめん、明日は無理だな…」
るいは謝った。
その言葉に、私は固まった。
何か感じたのだ。
言えない。
言葉に表せない。
だけど……
“心がこもっていない”
そう感じてしまった。
私がおかしいのかな?
あんなに好きが爆発しそうだったのに、今ではどこか違う感情を抱いている。
こんなに恋が冷めるのは早いだなんて、思ってもいなかった。
まるで、真夏の暑さでアイスが溶けていくかのような、儚い感覚を覚えた。
「(それにしても、カレンダーに書いてた明日の『重要』なことって、何なんだろう…)」
私は聞いてみる。
るいは目を泳がせながら答えた。
「え、と………親の事情で、遠くに出かけないといけないんだよ」
「親の事情って何〜?」
「まあ、じ、事情は事情だ。特に言えないが…」
「そうなんだ…」
「分かった、また今度にしようね!」
「ああ、楽しみにしておく」
「ありがとう!じゃ、まったね〜!」
「おう!」
私はるいの家を出た。
このまま長く居座るのは、なんとなく居心地が悪いから。
翌日―――
るなの友達である私は、とある作戦を企てていた。
昨日るなから電話が掛かってきて、全てのコトを聞いたのだ。
そして真実を突き止めるために、徹夜で考えた分刻みのスケジュール。
まず準備段階一つ目。
変装。
この日のために、昨日急いで買ったマスクやサングラス。
更に黒いジャンパーに、青いジーンズ。
少し怪しい気もするが、私が普段絶対に着用しないような服たちだ。
これならバレないだろう。
そして今日の起床時刻は4時半ぴったり。
いつも昼前に起きているからか、まだ寝ぼけている。
だから朝の体操をしてから、密かに家を出た。
私が一直線に向かうのは、るいの家。
昨日のうちに、一番最適なルートを探しておくという徹底っぷり。
自分で言うのもなんだが、完璧だ。
頭は悪いが、悪知恵だけは働くのだ。
いや、悪知恵では無いか。
―――そんなこんなで、ついにるいの家の前。
ここで待機するといけないので、家の裏側に回る。
いくらこの家の住人だとはいえ、こんなに細い道を通るはずがない。
私は息を殺して座り込んだ。
すると、家の中から賑やかな声が聞こえてきた。
きっとるいのお母さんだろう。
更に向こうの方から、ドアを開閉する音が聞こえる。
「(……よし、出発だ……)」
恐る恐る路地を抜け出すと、そこにるいの姿は無かった。
急いで草むらをかき分けて通りに出ると、るいらしき人がカバンを持って歩いているのが見えた。
私は電柱の後ろに隠れつつ、目をこらしながらるいの後をつけた。
「(どこ行くのよ、るい―――)」
しばらくすると、人通りの多い商店街に出た。
まだ時間が早いため、あまり人は見られない。
このような景色を見るのは新鮮だ。
………だが、こんな時間から出かけてどこかに向かう るいも、物凄く気になる。
絶対にバレずに、真相をさらけ出してやるんだから___!!
私は一度深呼吸をして、また歩き出した。