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#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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#探偵
橘靖竜
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「ハァァ…ハァァ…ハァァ…ハァァ…」月二夜
体が勝手に動く、そんな知識持ってないのにまるでどの時何をすればいいのか全て知っているかのように。
私の体は無我夢中で目の前にいる男性に対しひたすら蹴り続ける。
外れたり受け止められれば距離をとる、別の角度に周りまた蹴りを入れる、それだけを繰り返している。
もうかれこれ何分続いてるだろう、いくら運動部だとしても息が信じられないぐらい上がってきて喉も肺も痛くなってきた。
脳にもそろそろ酸素が回りきってないのも自分でわかる。
脚にも力が入らなくなってきた。
それなのに体が彼を蹴り続ける。
最初は少しイラッとしただけだった。
だって急に顔殴ろうとしたんだもん、しかも理由が曖昧…。
でもその程度でこんな疲れるほど蹴りたいとは思わない。
でも………気持ちは分からなくもない。
こちらは死ぬほど息が上がりながらも必死に蹴りを入れ続けている。
相手はそれを涼しい顔で受け流し受け止めている、しかも彼の言う脈の力…家を出る前に見せたあの力を本人は今引き出してない。
努力を無駄だと言われているこの感じ…そこにイラッとしている、消えかけた怒りの炎に油を注がれてる…そんなイメージ。
全身の疲労を無視してギアが上がり続けるこの体…正直もう止めて欲しい、苦しい…あなたに敵わないのはもう分かったから…早く…。
立て続けに蹴りを入れ、渾身の後ろ蹴りでとうとう彼を後方へ…森を隔てる通り道の奥へと吹き飛ばす。
本能のようなものが私に叫ぶ。
「彼が体勢を崩した今しかければ勝てる」
私の体は回り込みもせず一直線に彼に突っ込んだ。
彼は悠長に体勢を整え、立ち上がり際に私を睨みつけた。
その圧はギアが最高潮に近いこの私の体にさえ
「今しかけたら殺される」
と一瞬で手のひらを返し警告を鳴らした。
その彼は今、脈の力を発動している。
家を出る直前に見たあの…同じ空間にいるだけで肌が痺れるような鳥肌が立つ感覚…。
それ以上の恐ろしい殺意のような何かが前のめりの私の体を思わず後退りさせた。
天気のいい昼間でも薄暗い森の中、それでも彼は微動だにせず妙に美しい青の脈を輝かせ私を見つめている。
体が動かない。
さっきまでの私の勢いはどうしたんだろう。
ギアが上がっていたからこそ耐えられた疲労がだんだん重くのしかかってくる。
まるで一気に重力が何倍にもかかったかのように体が重くなっていく。
ついに膝が地面につく。
目の前がチカチカする。
呼吸がつらい。
吸っても吸っても体に酸素が入らない。
汗が止まらない。
つらいあまりに涙も止まらない。
口の中で変な唾液が溢れて汗と涙と共に地面に滴り落ちる。
なんで…私は必死に攻撃をし続けた…まだ彼は立ってる…地面に這いつくばっててもわかる…こっちに向かって来ている…。
意識が曖昧で目の前がぼやける、脳裏に勝手に浮かぶ過去の記憶がさらに私を嘲笑う。
なんで?なんで私の努力も苦悩も結果も全部…なんで無駄になるの…。
必死な母親の顔、何も言えない父親、いつも見下してくるクラスのみんな、先生のふりをしているクズの大人…。
なんで…なんで…なんでなんでナンデナンデ…!
「ガ…アアッ…アアアアア!!」月二夜
きっと今の私は、そんな同じ人間とは思えない周囲の顔よりも愚かで醜い形相ヲしているのだろう。
そう思える一周先にはもう私の心も脈の力とやらに支配された、そんな感覚がした。
もう私の意志とは関係無しに体が暴れたがる…私にはもうこの体の主導権を握らされていない。
「ホラヨ」芦兆
彼は私の体を軽々と蹴り上げた。
私の体の転がる先は森の中へ。
もう何も見えない、目を開けているのかすら分からない。
何も感じない、自分が生きているのかすら分からない。
意識が薄れる、まるで魂が何者かに引っ張られるように。
嫌だ…まだ死にたくない…まだ…私は──
「おや、また君かね、随分とお昼寝が好きなようだな」???
………。
「まぁ良い、好きなだけここで休んでいきなされ」???
………。
「はっ…」月二夜
「あ、起きた」芦兆
気付いた頃にはまた彼の家の布団の上だった。
先程の全身の疲れが嘘のように取れている。
同時に不思議な感覚に襲われる、私は寝ていた、そして私の寝ていた場所はここではない、そうはっきり思えた。
窓から見える景色からするに、お昼を過ぎた辺りかな。
「ごめんなさい…私どれぐらい気を失って…」月二夜
「んー…3時間ぐらいじゃないか?」芦兆
彼は壁に立てかけてある時計を見てそう答えた。
3時間…たったの3時間で全身の疲労が取れるだろうか…。
あそこまで疲れることなんて滅多にないので私の体はたったの3時間でも全回復する…そう思うことにした。
待て。
記憶がない、そう…あの森にいた時からこの家に戻ってくる時の記憶が…。
「戻る時、私を運んでくれたの…?」月二夜
「当たり前だろ」芦兆
「その…あの…えと…重かった…?」月二夜
「いや、人間皆重いだろ」芦兆
なんか反応に困る答えが降ってくる。
「そう……だよね、うんうん、その通りだと思う!」月二夜
我ながらなんか情けない気持ちになってしまった。
「そういえばシャワー借りたいんだけど大丈夫かな…そろそろ臭くて」月二夜
「いいぞ、着替えはあるのか?」芦兆
確か持ってきたバッグに一緒に着替えも詰め込んでたはず…。
布団から出て居間の隅に親切に置かれた私の非常用のバッグを確かめる。
荒らされてる様子も無いし、全部入ってる、ちゃんと着替えもある。
「良かった、大丈夫そう」月二夜
最悪服を借りようにも、この子…いや、この人のじゃ多分服がピチピチになるだろうし、あの大きい人のもブカブカで着にくそう…。
渡されたバスタオルとバッグの中にある着替えと小型ドライヤーを持って風呂場まで案内された。
脱衣所も風呂場もそこそこ広い、なんか見た事ないボイラーはあるけどちゃんと機能してくれてる…。
冷水は浴びなくて済みそう。
「…えっち」月二夜
「ううえええ?!あっ、ごめん!今すぐ出てく!」芦兆
そう言って慌てて逃げるように脱衣所の戸をばたんと閉じて今に戻っていった、私と戦ってた時と様子が大違いだ。
慣れない場所だから、危うくうっかり人前で脱ぐところだった、危ない危ない。
そうだ、相手は20歳の男性…。
なぜか私の心にいたずらごころが騒ぎ出す。
それにあの様子…まともに女性と関係を持ったことない…。
つまり彼にとって私はきっと…。
見ず知らずの異性と同棲とか恐ろしいとか気持ち悪いとか思えるのがほとんどだが、それは相手も同じことなのでなんだかんだ好奇心とか変な感情が色々と渦巻く感覚を胸に風呂場へと足を踏み入れる。
コメント
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うわああ第5話「静穏」読んだよ…!!めっちゃ臨場感あって戦闘シーンの息遣いとか苦しさがガチで伝わってきた😭💦 月二夜の「なんで…」って叫びにグッときた…努力が無駄になる悔しさが痛いほどわかるよ…。でも芦兆のギャップ萌えがすごい!戦ってるときと「えっち」って言われて慌てるのと差が激しすぎて笑った🤣💕 次が気になりすぎる…!