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それから少し経ち、ある噂が立った。
チェイテ城へ奉公した娘たちが、城から帰ってこないというのだ。
その噂は、街から街へと広がった。
だが、誰も真実を知ろうとはしなかった。
何故かって?
娘がどうなったのか、確たる証拠はない。
その上、名家であるバートリ家に楯突くことなど、できる筈がなかったのだ。
そんな中、悪魔の所業を白日にと立ち上がった、勇気のある娘が現れた。
彼女の名はフローラ。 出自はワラシア。
フローラは、城への奉公を自ら名乗り上げた。
鉄ノコ、ロープを衣服の内布に縫い付けて。
彼女は、迫り来る死の恐怖と必死に戦った。
ロザリオを、祈るように強く握りしめながら。
1610年12月30日。
ハンガリー王国の総監である、トゥルゾ伯爵の調査部隊が、チェイテ城の門を叩く。
チェイテ城から逃れた娘が、この城の実態について、王への告発に成功したからだ。
門を潜り抜けた途端、異様な空気が押し寄せてくる。
不審に思い、調査部隊は匂いの根源を探した。
だが、それは予想もしない結果だった。
庭を掘っても。
壁を崩しても。
死体。死体。死体。死体。
死体まみれだったからだ。
エリザの自室の扉を開くと、そこに彼女はいた。
逃げることも、抵抗することもせずに。
ただ、無邪気に座っていた。
そして、彼女はこちらを振り向き、口を開いた。
「お待ちしておりました、伯爵様。今から紅茶をお持ち致します。」
後日の法廷で、トゥルゾ伯爵はこう語った。
「まるで、世間を知らない無垢な少女のようだった。」と。
エリザはずうっと
夢の中。
Fin.