民族共生象徴の空間として、奇麗に整えられたウポポイを横目でチラ見したコユキは、立ち寄る素振りも見せずにズンズン裏手に回り込み、縦長の湖、ポロト湖畔に着くと、湖岸沿いに最奥点を目指して木立の中を歩いて行くのであった。
丁度ウポポイから真北に当たる対岸まで来たコユキは善悪への通信を試みた。
スマホでは無くお馴染みの絆(きずな)通信である。
『善悪、聞こえる?』
僅(わず)かな沈黙ののち善悪から返事が届いた。
『聞こえるでござるよ、着いたの?』
先日のオハバリからの通信で、距離は関係無いのだと理解していたつもりであったが、こうして北海道からでも問題なく通信出来た事に改めて安堵の息を吐いたコユキは本題に入る。
『うん着いたよ、今ウポポイの対岸なんだけどさ、どこら辺なんだろうと思って…… オルクス君に聞いてみてよ』
『りょっ! んじゃあ、ちょっと待つのでござるよ………… 北にもう百メートル位だってさ、気を付けてね』
『了解よ! 任しときなさいっ!』
慣れた物である、いつの間にか心拍数すら変えずに目的地を目指す女傑(じょけつ)に成長しているコユキであった。
進んだ先には不自然に木々が生えていない広場的に開けた場所があった。
「ここかな? どれ、『加速(アクセル)』スススススー!」
広場の真ん中辺りに立ったコユキは神速で回転を始め、周囲に積もっていた真っ白な雪を勢いよく撒き散らしたのである。
ラッセル車の如き除雪能力で周辺は空中を舞う雪のカーテンで埋め尽くされる中、一部だけがぽっかりと雪の無い景色を映していた。
大体二メートル四方の景色の前に進んだコユキはカギ棒をプスリとやり、その場に小さな祠(ほこら)の入り口を顕現させたのであった。
入り口を叩きながらコユキは言う。
「こんにちはぁー! レグバさーん! 聖女、いいえ真なる聖女をやっている者ですけどー、茶所(ちゃどころ)の方から来ましたぁ!」
「…………開いてるよ、お入り」
入口より少し離れた場所から聞こえた声に促されて、コユキは扉を押して中へ入って行くのであった。
扉の先には下に続く数段の階段があり、その先は半地下の様に広がった空間があった。
空間の奥には様々な木製の小さな彫刻が転がっており、中々スピリチュアルなムードが漂っている。
彫刻の更に奥に座っている人物の姿が見えた。
アイヌっぽい服装だ、地域的に見てあの刺繍はルウンペだろう、頭にも同様の刺しゅう入りの被り物を着けている。
手や足にはホシもテクンペも装着していない所を見ると普段着だろうと推測できた。
大きな目や鼻に太い眉、頬中に生やした髭や長く伸びた頭髪はコユキがイメージする北海道の神様、なんとかカムイのまんまに見える。
その姿を目にしたせいだろう、改めて声を掛けたコユキの物言いは、やや丁寧な物に変わっていた。
「お邪魔します、レグバ様、えっとあの、来るのが遅れてしまってゴメン、おっと、申し訳ありませんでした」
ペコリと頭を下げたコユキにアイヌっぽい運命神は笑顔を浮かべて言うのであった。
「気にしなくて良い、今日が丁度良いんだよ、お前の相方が魔力を吸うだろう? 今なら他の者の魔核は魔力をそれ程必要にはしていないだろうからな、ワシ等が合流しても大丈夫なんじゃないか? だからタイミングは超ばっちりだ、それに移動の間も今位世界中に命が溢れた状態なら透けて消える心配も無いしな、だから、丁度良いんだよ」
「は? は、はあ、そうなんですね…… レグバ様がそう言うんなら、じゃあそれでっ! 所で今の話だと幸福寺に行くのが目的とかそう言う感じなんですかね? レグバ様」
「レグバはワシ等四柱の総称だからな~、ワシ個人はフェイト・ラダ、気楽にフェイトと呼んでくれれば良いぞ、様も付けなくて良い、コユキの言う通りお前らの拠点で集合するのが目的でその後にこそ本番があるんだぞ? まあ、大丈夫だとは思うが念の為の魔力供給源、モバイルバッテリーがコユキの仕事だな、苦労を掛けてすまんな、ほらもう少し時間が掛かる、そんな所で立ち尽くしていることは無い、こちらに来てお座り、これでも飲んで待っていておくれ」
言われたコユキがフェイト神の指し示した座布団に腰を降ろすと、どこから取り出したものか、カップに入った牛乳が目の前に置かれるのであった。
「っ! す、凄いですね、何もない空間からミルクを取り出すなんて…… やっぱり様付で呼ばせて頂きます、フェイト様! 流石は神様ですね、コユキリスペクトッ! です」
「ん? いやこの冷蔵庫から出して注いだだけだぞ、中身も近くのスーパーくまがいで買って来た普通の調整牛乳だしな、最近はあそこの海鮮丼ばかり食べているんだ、価格もボリュームも大満足なんだぞ? 魚介の種類が豊富な所もウ・リだがな、所謂(いわゆる)オキニって奴だな、内緒だぞ? 内地のバイカーやハイカーが集まっちまったら地元民が買えなくなるかもしれないからな?」
「あ、そうなんですね…… 頂きます」
あとがき
■□■ SpecialThanks!! ■□■
北海道 白老町 スーパーくまがい 様
本編に書かせて頂く事を快く了承して下さいました。
またお店の現状も親切に教えて頂き、スーパーに併設されている食堂『げんき広場』では、
なかなかの大盛りの各種海鮮丼がオススメです! 店内でも頂けますしテイクアウトも当然対応済み、できますっ。
そして、鮮魚コーナーには前浜で取れた絶品を始め、種類豊富なお魚が揃っております!
ミソたっぷりの毛ガニのボイル…… ふぅ、食べなきゃだめですよ? マジで……
お近くの方、また観光で訪れる皆様にも超絶お薦めのグルメスポットなのであります、是非お立ち寄り下さいませ。
満足されること請け合い、ですよ♪
愛車や愛馬(バイク)で、GOGO、行くのだぁ! 案件でございます。
走れっ! ですよっ?
快く受け入れて頂いたスーパーくまがいの皆様、本当にありがとうございました!
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*‘v’*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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