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✧≡≡ FILE_041: 疑問 ≡≡✧
さて──ひとつ、不可解なことがあった。
それが何か、分かるか?
AとB──そして、少年ローライトが真っ先に気づいたことだ。
ヒントは新聞とニュース。
“爆弾に近づけば爆発する”という、あの脅し文句。
思い出してほしい。
犯人は、『誰かが爆弾に近づいた瞬間に起爆する』と言っていた。
ならば、本来あの時──“B”が両手で爆弾を抱えて振り回した瞬間、街ひとつ吹き飛んでいてもおかしくなかったはずだ。
少なくとも、ワイミーさんの顔は真っ青になり、Aは泡を吹いて倒れていたに違いない。
だが、実際は何も起こらなかった。
なぜか?
その答えは──少年が研究所を飛び出す、ほんの少し前にあった。
──遡ること、約2時間前。
廃ビルの一室。
机の上には、複数の映像モニターと操作パネルが並んでいた。
だが今、そのほとんどは──砂嵐。
「……やっぱり、壊れたか」
男は窓の外を見もせず、手元の紅茶を口に運ぶ。ぬるい液体が喉を通り、わずかな鉄の味が残った。
「EMPの範囲、予想以上だな……ワイミーさんの金属、優秀すぎるよ」
モニターのノイズが、かすかに空気を震わせる。
この爆弾は、「電気が止まった瞬間に爆発する」という構造を持っている。
だから彼は、外部電源につながる“主電力ライン”に遠隔スイッチを仕込んだ。
監視カメラで状況を確認し──指をひとつ下へ滑らせるだけ。それだけで爆弾への通電が断たれ、爆弾は爆発する。
指一本で世界を焼けるようにしてある。
──だが問題が起きた。
今、その「目」が失われた。
原因は、2時間前の連続爆発。
湾岸地下施設で起きた第一の爆発は、ルミライトの内部温度が臨界を超えて暴走した結果だった。
そして、その爆風と熱波が近くの送電線を焼き切り、第二の爆弾を巻き添えで爆破させた。
その瞬間、周囲の電磁環境が死んだ。
EMP──電磁パルス。
ルミライトの光爆発に伴う衝撃波が、電子機器のすべてを停止させた。
監視カメラも、通信ラインも、制御端末も。
結果、モニターは一斉に沈黙。
「……まあ、いい」
男はカップを机に置き、笑う。
「二基で充分だ。世界はもう気づくだろう。“夢の金属”がどれほど危険かを……」
彼はスイッチに触れない。
押す必要などないのだ。
Qの目的──“知らせること”は、もう果たされたのだから。
「……さて」
冷めきった紅茶を飲み干し、立ち上がる。
「見えないなら、見に行こうか」
窓の外には、まだ白い煙が立ちのぼっていた。
男は一度だけ、それを確かめるように見上げ、呟いた。
「……もうすぐ会えるな、ローライト」
──そして、いよいよ動き出す。
後に“ウィンチェスター爆弾魔”と呼ばれることになる、その男が。