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学校が好き。
小さい頃から、学校を休んだ事なんて一度も無かった。
友達とお喋りできるし、何より学校と言うものが好きだったのだ。
実は今回で転校は三回目。
だけど、今までずっと上手くやってきた。
今回の学校だって、きっとうまく出来る。
佐倉坂には来たことも無いけれど、きっといい人がいるはず。
「お母さん、私、行ってくる!」
「行ってらっしゃい。」
校門に着くと、そこにはクラスの委員長らしき人が二人立っていた。
すかさず私は挨拶をする。
「おはよう御座います!今日から2年5組に入る、佐々木瑠璃です!」
二人は私の自己紹介を聞くと、ピクリと震え、目を丸くさせたがすぐににこやかな笑みに変わった。
「おはよう御座います。2年5組の学級委員長、春野恵子です。慣れないことがたくさんあるだろうけれど、一緒に乗り越えましょうね。」
「おはよう御座います。2年5組の副委員長、北川陽翔です。‥よろしくお願いしますね。」
二人はそう私に挨拶をすると、すぐにぼぅっと遠くを眺めた。
目は虚ろで、焦点があっていない。まるで心の無い機械だ。
‥なに、これ?え?大丈夫なやつかな‥?
不思議に思いながらも、職員室へ向かうと、いかにも熱血教師な男性教師が私を迎えてくれた。
「おはよう!君が、佐々木さん?」
「おはよう御座います!そうです!」
「そうかそうか!早速だが、朝のホームルームが始まるまで、ここで待っていてくれ。」
そういって案内されたのは、誰も居ない部屋。
おそらく会議室だろうか。
木造の机とパイプ椅子が規則正しく並べてある。
私はその一つに荷物をおろし、隣の椅子に自分の腰を下ろす。
壁には沢山の写真が飾ってあって、校長先生だろうか、おじさんからおばさんまで載っている。
順を辿って見ていくと、そこにはある少女が映っていた。
目は見開き、眉毛をあげ、しかし口は笑いながら、とおかしな顔をしていた。
‥しかし、他の写真と見比べてみると、ある違いがあるのに気付いた。
「‥この人、もしかして、泣いているの‥?」
元々他の写真も全部モノクロだから、涙など本当はとても見えづらい筈なのだが、何故かその写真だけ、くっきりと映っていた。
よく他の写真を見ても、目元がすこし潤んでいるとか、悲しそうに眉を下げている写真ばかり。
「何でだろう。せっかく写真を撮るのに、泣き顔だなんて…。」
私は不思議に思い、写真に近づいた。
あと少しで手が触れそうになった時、ガラリと部屋のドアが開いた。
「何をしているんですか?」
そこに居たのは、さっきの熱血教師。
相変わらずにこやかな笑みで話しかけてくる。
「あっ、いえ。写真を見ていただけです。」
私がそう答えると、彼はずん、と一歩を踏み出して私に近づいた。
そして、さっきから微動だにしない笑みで言う。
「他には何か見たのですか。佐々木さん。」
「…え?」
そう言いながら、彼は私の腕を引っ張り、部屋の外で連れ出した。
「…すみませんね、僕のミスで。あそこは教頭から使うなって言われていたのに、つい案内しちゃいました。」
「あっ、いえ。こちらこそ、なんだか申し訳ないです。」
‥他には、ってどういう意味なんだろう?
あの写真は、見てはいけないものだったのかな。
世間で言う、キギョウヒミツとか、そういうやつ?
「じゃあ、みんな待っているから、行こうか。」
いつまでも笑顔で話しかけてくる彼を少し不気味に思いながらも、私は教室に向かった。