教室のドアを開けると、そこには横1列5人、縦1列6人、合計約30人ほどの生徒がじっと私を見つめていた。
緊張するなぁ‥。
「はい、皆さんおはようございます。今日から新しくこの学級に入る、佐々木瑠璃さんです。」
「おはようございます!佐々木瑠璃です!宜しくお願いします。」
そう言うと、生徒たちは一瞬固まったような顔をしたが、すぐににこっと柔らかい笑みで私を迎えてくれた。
-ただ、一番前の女生徒を覗いては。
「はい、じゃあ一番奥の席、あそこに座ってね。」
指定された席に座って、荷物を整理していると、隣の席の男子生徒から話しかけられた。
「初めまして。森川遼って言うよ。宜しくね。」
眼鏡をかけた、優しい雰囲気をまとった男子生徒だった。
彼は握手を求めるように手を差し伸べたので、私も同じように手をぎゅっと握って返した。
間もなく朝のホームルームが終わり、一時限目までの休憩時間になったところ。
先程の、一番前の女生徒が私に話しかけてきた。
「‥ねぇ。」
「はいっ!」
「私、成瀬みおって言うの。宜しくね。」
神妙な顔で言う成瀬。
でも、顔つきはよく、鼻筋がよく通っている。
きれいな顔だな‥。
「宜しくお願いします!」
「こちらこそ。‥佐倉坂には、来たことはあるの?」
「いえ、来たことは無いですよ?」
どうしてそんな質問をするのか不思議に思いつつ、私は質問に答えた。
「そっか。‥ここだけの、話なんだけど。本当に、大事な話で-。」
そこまで言って、突然彼女の言葉は遮られた。
「佐々木さん。」
それは紛れもない、朝話したばっかの春野-。
学級委員長だった。
「春野さん?何か‥?」
「校内の案内、要りますか?来たばっかで何にも分からないと思いますので‥。」
春野の黒髪が窓から吹かれた風で揺れる。
赤いスクエア型の眼鏡をかけた彼女はにこっと微笑む。
確かに、何にもわからないし‥。
案内してもらおっかな。
「はい。お願いします。」
そう言うと、彼女はドアを開け、廊下に出た。
私も続こうと思ったが、一度振りかえる。
「ごめんね、成瀬さん。また今度。」
「‥うん。気を付けてね。」
学級委員長の春野とは対象に、茶髪のポニーテールをゆらして、彼女は去っていった。
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