テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
翌朝。
「蒼真」
「はい、お嬢様」
「……近い」
「護衛のためでございます」
「近いって言ってるでしょ!!」
玄関前で、藍琉は顔を真っ赤にしていた。
昨日の出来事のせいで、妙に蒼真を意識してしまう。
目が合うだけで心臓がうるさい。
(なんなのよこれ……)
車に乗り込んでも落ち着かない。
「お嬢様、体調が優れませんか?」
「優れてるわよ!!」
「顔が赤いようですが」
「暑いのよ!!」
「本日は10度でございます」
「うるさい!!」
蒼真は少しだけ微笑む。
その余裕がまた腹立たしい。
―――――
学校。
「ねえ藍琉、今日迎えに来てる人めっちゃイケメンじゃない?」
友達の言葉に、藍琉は固まる。
「……は?」
「黒髪で背高くてスーツの人!」
「……ああ」
胸の奥がざわつく。
(見ないでよ)
なぜか嫌だった。
「執事よ」
「え!?執事!?本物!?」
「そうよ」
「えー!!いいなー!!」
その瞬間。
知らない女子たちの声。
「ねえ、あの人誰?」
「俳優みたいじゃない?」
「話しかけてみようかな」
藍琉の中で何かがプツンと切れた。
―――――
放課後。
校門の前。
蒼真の前に女子生徒が数人集まっていた。
「お仕事なんですか?」
「連絡先教えてください!」
藍琉はそれを見た瞬間――。
ズカズカ歩いていく。
「蒼真」
「お嬢様」
藍琉は彼の腕を掴む。
そして宣言した。
「この人、私のだから」
一瞬の静寂。
女子たちが固まる。
蒼真も珍しく目を見開いた。
「行くわよ」
藍琉はそのまま腕を引っ張って車へ向かう。
車に乗った瞬間。
「……あ」
自分が何を言ったのか理解した。
顔が一気に熱くなる。
「ち、違うのよ!!」
「はい」
「変な意味じゃなくて!!」
「はい」
「執事って意味で!!」
蒼真は少しだけ笑う。
「ええ。存じております」
「……笑った?」
「いいえ」
「今笑った!!」
藍琉は恥ずかしさで爆発しそうだった。
そのとき。
蒼真が静かに言う。
「ですが」
「なによ」
「嬉しゅうございました」
心臓が止まりそうになる。
「……は?」
「お嬢様が、私を必要としてくださって」
藍琉は言葉を失う。
胸がぎゅっとなる。
でも理由はまだわからない。
「……当たり前でしょ」
やっとそれだけ言う。
「あなたは私の執事なんだから」
蒼真は優しく頭を下げる。
「はい。お嬢様」
車が夕焼けの中を走り出す。
藍琉は窓の外を見ながら思った。
(……なんでこんなにドキドキするの)
まだ彼女は知らない。
それが恋だということを。
でも――。