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夜。
寮の自室。
カーテンを閉め、灯りを落とす。
机の上にノートパソコンを開く。
ブックマークの一番上。
名前のないネット掲示板。
ログインすると、すぐに“既読”が付いた。
――待っていた。
内田はキーボードに指を置く。
【報告】
1、フラッシュについて
・過去の邪悪を記録する
・敵対的存在を数秒間、行動不能にする
2、外部因子
・FPEの世界は、創造と破壊の力の均衡で成り立つ
・これを揺るがす存在がいる可能性
・俺は原因ではなかった
送信。
画面が白く点滅する。
数秒。
そして、返信が表示された。
吉田千佳
ネットの向こうでサポートしてくれる幽霊。
吉田千佳
文字は淡く、どこかノイズ混じりに揺れている。
『了解しました。フラッシュはやはり鍵でしたか……。
さらなる強敵に遭わないことを祈ります。
どうか気をつけて。また連絡をください。 』
内田は静かに画面を見つめる。
フラッシュは鍵。
“上から塗られたもの”を止められる。
均衡が崩れれば――
基盤そのものが裂ける。
キーボードに指を置き、短く返信する。
【了解。
均衡が崩れる兆候があれば、即報告する。
外部因子の気配は、まだ掴めない。
おやすみなさい】
送信。
画面の端が一瞬だけ、砂嵐のように揺れた。
ノイズ。
相手が幽霊なので仕方ない。
背後の空気がわずかに重い。
だが振り向いても、誰もいない。
画面には最後のメッセージが残っている。
『おやすみなさい。』
内田はノートパソコンを閉じた。
部屋が暗闇に戻る。
窓の外で、風が鳴る。
この世界は紙。
誰かが塗る。
誰かが破る。
そして、
それを記録する者がいる。
フラッシュは鍵。
だが、鍵は――
扉を開くものでもある。
闇の中、
内田はゆっくり目を閉じた。
次に均衡が揺れるのは、
誰の手によってか。