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足早に歩くもふくんに手を引かれて、足がもつれそうになりながらもついて行く。あの変な奴に絡まれた俺を助けてくれてから彼はずっと無言だ。
『こんなはずじゃなかったのに。もふくんとの京都はもっと明るくて楽しい旅になるはずだったんだけどなぁ…』
全部俺が悪い。俺がしっかりしてないから、もふくんはずっと俺を守ってくれてたのに。ついさっきまでの幸せな時間をどうやったら取り戻せるのかさっぱり分からなくて俺は途方に暮れている。
「…もふくん…ごめんね、俺迷惑かけちゃってばっかりで…。しっかりしろって感じだよね、ほんと」
俺の謝罪の声でもふくんは弾かれたようにこちらに振り向いて足を止めた。その顔は驚きに満ちていて、俺の想像とは違っていた。もふくんはしばらく俺を見つめた後、苦虫を噛みつぶしたような顔をして頭を掻き出した。
「待って待って待って、どぬくさんは悪くない…あぁーごめん俺さっきの奴に腹立ちすぎて飛んでたわ」
ごめんーそんな顔しないでー迷惑なんて思ってないです、と申し訳なさそうに言う彼の顔を見て、安堵で心が震えている。こんなに俺の感情をぐちゃぐちゃにできるのは世界にたった1人、もふくんしかいない。
「良かった…もふくんに呆れられたのかと思って、俺…」
ぽろっとこぼしてしまった言葉を、もふくんは取りこぼさず受け取ったみたいだった。
「ぇえ?無い無い、ある訳ないだろそんな事…さっきの奴がどぬくさんにえげつないセクハラナンパしてっからこんにゃろって思って、俺の恋人に何か御用ですか〜〜〜???って言」
「えっ!?」
「え?」
「こ、こ、こいびとって」
「ああ、あの変態どぬくさんに一晩………いやっ、いいや!あいつしつこかったからつい嘘ついちゃいました、ごめんなさい」
「そっ、そうなん、デスカ…」
もふくんがぺこっと頭を下げて謝ってくれてるけど、恋人って単語のインパクトが強すぎて上手く頭が回らない。どんどん顔が熱くなって、自分が今どんな状態か嫌でも分かっちゃう。顔を上げたもふくんが俺を見て目を丸くした。そりゃそうだ。
「どぬくさん顔真っ赤」
「ちょっ…と今見ないでくれますか…」
繋がってないほうの手で顔を隠すけど、片手じゃどうやったって隠しきれなかった。でもこれはもふくんが悪い。