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「じゃあ気を取り直して土産でも見てまわりますか、さっきのカフェでは見れなかったことですし。」
俺の顔色が通常色に戻ったことを確認したもふくんは繋いでいた手を離そうとした、のを俺は許さず恋人繋ぎに変えて、手に力を込める。もふくんが、どぬ?と訝しげに聞いてきた。うん当然の反応。分かる、分かるよ。俺もいきなりそんなことされたら同じ反応すると思う。心臓がどくどくと脈打ってるのを悟られないように涼しい顔を繕って俺は続ける。
「もふくん、ひとつ良い提案があるんだけど」
「おっ、何ですか?」
俺の思わせぶりな言い方に興味を惹かれたのか、もふくんがにこにこしながらこちらを見る。行け!今なら言える、頑張れ俺!
「この旅行中は、恋人のふりしてまわりませんか…!」
言った!最後のほうだいぶ小声になったけど…!もふくんは何度か瞬きをした後、え、なんで?と言った。それはそう。
「恋人がいるって一目で分かれば、さっきみたいな変な人とか、声かけられること少なくなると思うんだよね。もふくんも、ゆっくり観光したくない?えーと、なんたらかんたら像っての絶対見たいって言ってたじゃん」
「千手観音坐像な、一文字も合ってねぇよ」
「だって俺のメインはもふくんにご馳走してもらう抹茶スイーツで、他はおまけなので!」
ドヤ顔で胸を張ってみせると、おい!と笑いながらもふくんが突っ込んでくれる。もふくんはそのまま繋いでる手をひょいと持ち上げてじっと見た後、まぁ良いか、と言った。
「良いよ、どぬちゃんの提案に乗ってあげようじゃないか。これで声かける人が少なくなるなら俺も嬉しいし…カップルチャンネルの延長だと思えばやれなくもない」
「うん!!!!」
「声デッカ」
まさか本当に提案に乗ってくれるとは思わず、喜びと驚きのまま声を出してしまった俺にもふくんはひとしきり笑った後しみじみと言った。
「えとさん見たかっただろうな、この旅行中の俺たち」
それは、ほんとそう。