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それから私は慌てて事情を説明した。
わけがわからず聞いていた彼も、私が話し終わる頃には「なんだ」と肩透かしをくらったように笑った。
「焦ったー。
そういうことならまかせろ!
あいつら、見ててじれったかったんだよなぁ」
「ほんと? 協力してくれる?」
「おう。乗りかかった船じゃんか」
「ありがとう!」
私はその言葉を聞いて、なぜか肩の荷が下りた気分になった。
橋本くんなら当日もちゃんと気を効かせてくれるはずだし、ボロを出さずに済む気がする。
ほっと胸を撫で下ろした時、「けどさぁ」と橋本くんが言った。
「しかし佐藤、まじでどんくせーな。
二ノ宮と広瀬を間違って告白するなんて、アホすぎるだろ。
広瀬もすげーとばっちりだったな」
橋本くんは、私が佐藤くんが好きだと知らない。
だからその言い方は屈託がなくて、本当はドキッとしたけど、私は曖昧に笑い返した。
「じゃ、日曜あけといてね」
「おー、どこに何時集合なん?」
「まだ杏と相談してなくて……。
決まったら連絡するよ」
そう言って橋本くんと連絡先を交換すると、私は彼と別れようとした。
「あ、広瀬ちょっと待って」
橋本くんに呼び止められ、立ち去ろうとしていた私は足を止めた。
「なに?」
「なぁ、佐藤たちに、ダブルデートの相手は俺だって言うつもり?」
「え? うん、そのつもりだったけど……」
「それ、当日まで伏せとこうぜ。
佐藤たち、俺だってわかるとなんか勘ぐってきそうだし」
(あぁ……)
たしかにそうかもしれない。さすが橋本くんだ。
ずっと佐藤くんに相談されていただけある。
「ほんとだね、なら当日まで内緒にしとく」
「おう、じゃあ日曜な」
私は頷いて橋本くんと別れ、杏にLINEを送った。
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遊園地に行ってくれる男の子、見つかったよ!
それで、日曜は何時に待ち合わせしよっか?
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***
それからあっという間に日曜日になった。
着替えを終えた私は、ふいに窓の外を見やる。
梅雨はいつの間にかあけたようで、空は雲一つない晴天だった。
杏たちとの待ち合わせは、遊園地がある駅に、午前11時。
私はベッドの上のスマホに目を移す。
家を出る時間まで、あと30分。
昨日夜、橋本くんにLINEをしたのに、まだ返事がなかった。
(おかしいなぁ)
スマホを気にしていると、ふいにLINEのランプが点滅した。
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ごめん。
熱が出て、今日は行けそうにない。
ほんと悪い。
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(……えっ)
私は橋本くんからのメッセージを二度見した。
だけど何度見ようとも、「行けない」という連絡は変わらない。
(えっ。 ちょっと待ってよ、橋本くん……!)
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えっ、熱!?
ほんとに来られないの?
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私は慌てて指を動かす。
本来なら体調を気遣ってあげるべきだけど、今の私にそんな余裕はない。
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すまん……。
熱が38.6度。
行ったとしても、倒れる気がする。
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(もう、もう、橋本くんってば……!)
あんなに「まかせろ」って言ってたのに、肝心な時に熱なんて出さないでよ……!