このことを知ったら元貴はどう思うのだろうか。
でも、付き合ってるわけじゃないし・・・・。
少し悩んだ後、俺はこくんと頷いた。
side mtk
レコーディングルームの中、音の微調整に集中していた俺に、
マネージャーが静かに近づいてきた。
「大森さん、少しいいですか?」
イヤホンを外して顔を上げると、
マネージャーの眉が少し心配そうに寄っているのが分かる。
「若井さん、なんか体調悪そうなんです。
藤澤さんが気づいてサポートしてくれてるんですけど、
家に送る手配をしようとしているので、念のためお伝えしておきます。」
「……若井が?」
ドクンと胸が嫌な音をたて、心臓が跳ねる。
….さっき、泣いてたもんな…..。
つい先ほどの唇を嚙みしめ、
必死に涙を堪える若井が目に浮かんだ。
「どこにいるの?」
「廊下のほうです。藤澤さんと一緒にいるので、平気だとは思うんですが……。」
その言葉を聞き終え、俺はゆっくりと立ち上がり、ドアを開けて廊下に向かった。
(…今日、元貴の家に言ってもいい…?)
廊下を歩きながら、
頭の中で若井の顔がちらつく。
暫く廊下を突き進むと、
俺は若井と涼ちゃんの姿を見つけて、立ち止まった。
涼ちゃんが若井の腰に手を回し、
軽く支えるようにしている。
若井は疲れたように肩を落とし、
涼ちゃんの言葉に静かに頷いていた。
「今日は、僕の家に来ない?」
涼ちゃんが柔らかい声でそう言うのを、俺は遠目に見てしまった。
若井は少し戸惑いながらも頷く。
その仕草に、俺は胸がぎゅっと痛んで、目の前が真っ暗になる。
心臓が小さく鳴り響く。
…….けれど、心臓が警告を鳴らしているのを無視し、
その痛みを飲み込んだ。
僕は、バンド活動のことを考えた。
若井のことも涼ちゃんのことも、僕にとっては何より大切な仲間で――
でも、それ以上の感情が若井に向いていることを自覚している自分が怖かった。
「……戻らなきゃ。」
小さな独り言が漏れる。
スタジオに戻る途中、頭の中を冷静に整理しようと努める。
僕は、バンドの未来を一番に考えなければいけない。
今、僕たちは、多くの注目を集めている。
でも、それは僕一人の力じゃない。涼ちゃんの繊細な演奏、若井の力強いプレイ。
二人がいなければ成り立たない。
それに――。
若井だって、涼ちゃんだって、
もっとスポットライトを浴びるべきだと思っている。
だから、僕だけが目立つ状態を変えたい。
涼ちゃんも若井も、技術力も上がってきているし、ビジュアルも綺麗なんだから、
二人にももっと注目が集まるようにして、このバンドを国民的バンドにしたい――
そう思っている。
そのために、俺はいつもスケジュールを調整し、プロモーションや楽曲制作に全力を注いでいた。
……
コメント
101件
ここまで悲しいすれ違いは久々に見た …… 😭😭 想いを伝えるのも、それを感じるのもとても難しいことだからなぁ、、、若井も、大森さんも頑張れッ!!
すれ違いかぁ…しんどいよねぇ…😿うーん難しい…2人とも素直に言えなくてむずむずしてしんどそう😿
2人ともすんごいお互いに想い合ってるのに…すれ違いが悲しすぎるよ