二人にももっと注目が集まるようにして、このバンドを国民的バンドにしたい――
そう思っている。
そのために、俺はいつもスケジュールを調整し、プロモーションや楽曲制作に全力を注いでいた。
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二人の未来が、僕の手にかかっていると感じるからだ。
二人もそんな僕に全幅の信頼を寄せて、黙ってついてきてくれる。
僕は二人がとても大事で、このバンドがとても愛おしかった。
僕が止まれば、その分、バンドの成長も止まる。
一日でも、一分、一秒でも惜しい。
今年に入ってから、そんな想いがずっと離れなかった。
今年を走り切って、どんな結末になるのか。
ワクワクもしていたし、それ以上に、
僕に掛かるプレッシャーも大きかった。
でも、そんな俺の考えをかき乱す存在が若井だった。
彼を思うと、頭の中の何もかもが若井のことで埋め尽くされる。
心が乱れて、集中力を失いそうになる。
その状態が、正直怖い。
足を引きずるようにして、レコーディングルームに戻る。
ドアを開けると、さっきの自分が取り組んでいた楽譜や音源が机の上に散らばっていた。
「よし、集中しよう。」
自分に言い聞かせて座り直すが、視界の端にはどうしても若井の顔が浮かぶ。
楽譜に目を落とすたびに、ペンを持つ指が震える。
「……ダメだ。」
思わず机に手をつき、額を押さえた。
僕は、何をしているんだ?
若井の演奏も、涼ちゃんの表現力も、
世界中にもっと知ってもらうために、
僕ができることを全力でやる。
それ僕の覚悟だった。
でも――。
若井があんなふうに苦しんでいるのを見て、
何もできない自分に腹が立つ。
それ以上に、若井が涼ちゃんに頼るのを見て、
心の奥がちくちく痛む。
俺は席を立ち、楽譜を乱雑にカバンに突っ込んだ。
「もう、無理だ。」
考えるよりも先に、行動していた。
荷物を持ってレコーディングルームを飛び出し、スタジオの地下駐車場に向かう。
「間に合ってくれ…..」
…..
コメント
79件
読み返しています。毎回素敵な作品でドキドキします。更新楽しみにしています。
え!?!?!!今のところ全て読んだんですけど神過ぎてる、、、、続きを、、、、、、、、、あとこういうものがたり好きすぎる。。。。。。s貴も良いね。、、、、、
全部読み返してきました!!mtkくん頑張って!