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ひとまずなんとなったかな?舘様、、大丈夫だといいな、、 続き楽しみにしてます!
夕方になり、そろそろ学校が終わったであろう時間。俺は翔太に電話をかけた。
「もしもし。」
「…もしもし、涼太、です。」
「おぉ、涼太。」
「今、何して、る?」
「いつものメンツで帰ってるところ。どした?」
「…そっか。」
「んで、何かあった?」
「…」
「…涼太?」
「…なんでもない。邪魔してごめん。」
「ちょ、待て、涼太!」
翔太の制止を無視して電話を切る。暫く着信音が鳴り続けていたが、やがてそれも煩わしく感じ電源を落とした。…俺がいなくても楽しそうだった。その事実がお腹を痛くさせ、またトイレに駆け込んで痛みに耐えた。
どれだけ時間が経っただろう。
「「「ただいまー」」」
と3人が帰ってきた。返事しないといけないのにそんな気力もない。大人しくあっちの会話に耳を傾ける。
「あれ、声がしないね。」
「部屋で寝てんのかなー?」
「ってか夜ご飯食べてないじゃん…」
「もー…見てないとすぐ食べなくなるんやから…」
「涼太くん部屋にいなかったよ…?」
「え、でも靴はあるよな…?」
「うん。前に出て行ったときはちゃんと靴履いてたから家出の可能性は低いけど…」
「…!もしかして…」
「めめ、何か分かる?」
「ほら、今日学校が怖くて腹痛なってたじゃん。」
「…!じゃあ今トイレに籠ってるってこと…!?」
…いや、結論に辿り着くの早くない?しかもめっちゃ正確だし。現実逃避がてらそんなことを考えてると思い切りドアをノックされた。
「涼太くん!おる!?」
「…いる、よ。」
「よかったぁ…お腹痛くなったん?」
「…うん、でも心配しなくて大丈夫だから…すぐ出てくるから…」
「でも…」
そう康二兄さんが言った瞬間、インターホンが鳴った。
「俺出るね。」
「うん、頼んだラウール。」
「はい、どちら様…って翔太くん!?」
え、翔太?何でこんな時間に…?
「…っ、い゙っ…た…」
「…!涼太くん!?大丈夫?」
「大丈夫、だから…翔太の方、行って…」
「…分かった。すぐ戻るからな。」
そう言って康二兄さんは離れて行った。そして俺はまた聞き耳をたてる。
「翔太君、どうしたん?こんな時間に…」
「…涼太は?」
「え?」
「涼太は、どこにいますか…?」
「…涼太くんなら今お腹痛いって言ってトイレに籠っとるよ。」
「…待っててもいいですか?」
「え?」
「あいつと話がしたい、です。今日涼太から電話があって、なんか、ほっといたら駄目な気がして…」
「時間かかるかもよ?いいの?」
「はい、3人が良ければ…」
「俺らはええよな?」
「うん、めめもいいでしょ?」
「うん。」
「じゃあ、適当に待っといて。俺涼太くんのところ行ってくるな。」
「…お願いします。」
「うん、任せといて。めめ、らう。暫く翔太くんの相手頼むな。」
「「りょーかい。」」
そして康二兄さんはまた俺の所へ来た。
「涼太くん、翔太くんが話したいって。出れそう?」
「…っ、うぅ…」
「涼太くん?泣いてる?」
「泣いて、ないっ…」
「…怖いんやろ?」
「…」
「めめに聞いたときは学校だけやったけど。段々行けなくなるうちに俺なんかって思ってきたんやろ?」
「…」
「まぁ、そうであろうがなかろうが一回話してみ。俺あっちで待ってるから。」
そう言って康二兄さんは離れて行った。…正直まだ怖い。もう必要ないんじゃないかって思うと心臓が締め付けられるように痛くなる。でも、話さないと。震える体を押さえつけながらトイレから出て、リビングに行く。そこには兄さんたちと翔太がいた。
「あ、涼太くんおかえり!大丈夫?」
「う、ん…大丈、夫…」
声は震えていた。多分顔は真っ青だと思う。だって、みんな心配そうに俺を見てくるから。
「涼太…」
「…しょ、た…」
「…俺らは部屋にいこうか。行こ。めめ、ラウ。」
「「はーい。」」
そう言って3人はリビングから出ていった。
「…大丈夫?顔色悪いけど。」
「大丈夫…どうしたの…?」
「…今日何で電話した?」
「…何してるか気に、なって…」
「…俺さ、まだお前と出会って1年も経ってないけどお前が嘘ついた時くらいわかるよ。」
「っ…」
「それを踏まえた上でもう一回質問な。今日何で電話した?」
「…みんなに会いたくて。でもいざ電話したら、俺いなくても楽しそうだなって、思って…迷惑かなって思ったら、もう、無理だったっ…」
「…なんだ、そんなこと。」
「…え?」
驚いて顔をあげると、翔太は携帯を操作してその画面を俺に向けた。そこには、
「舘さーん!久しぶりー!」
「退院もしたみたいだしよかったーお見舞い行けなくてごめんねー」
「また舘さん遊びたいよー!」
「寂しくなったらいつでも俺ら呼んでね!」
みんなからのビデオメッセージが写っていた。
「…え…?」
「今日お前が電話切った後あいつらが撮ろうって言って撮ったの。んで、そのままグループメールに送っても涼太は見ないだろうから、電話の内容聞きに行くついでにこれを見せに来たってわけ。そしたらお前顔色悪いし何事だと思ったわ…」
「…ごめん。」
「いーよ別に。電話の真相も聞けたし。でもこれで分かっただろ?」
「何…が?」
「お前が思ってる以上に、俺らが寂しいってこと。」
そう言って翔太は照れくさそうに笑った。その笑顔を見て涙がでる。
「…会いたい…」
「うん。」
「みんなに、会いたいっ…でも、学校行くの、怖いっ…」
「じゃあ、俺らが会いにくるよ。そしたら怖くねぇだろ?」
「っ、いい、の…?」
「いいよ。あいつらも喜ぶだろ。」
その言葉に安心して急に体から力が抜ける。そのまま床に倒れこんだ俺を見て翔太が慌てた様子でこちらに駆け寄った。
「涼太!涼太!しっかりしろ!」
「しょーた。大丈、夫…ちょっと、疲れた、だけ…」
「疲れただけで普通倒れねぇわ!向井さん!目黒さん!ラウールさん!」
あぁ、呼ばなくてよかったのに。本当に疲れただけなのに。すると3人がこれまた慌てたように来た。
「涼太くん!どうしたん!?」
「…ちょっと、疲れた、だけ…」
「疲れただけで倒れないでしょ!」
わぁ、ラウ兄さん翔太と同じこと言ってる…ふと、額に手が当てられる。これは…蓮兄さんかな。
「あっつ!?熱あるし!」
「はぁ!?」
あ、熱あったんだ。どおりで起き上がれないわけだよね。ってか眠い…
「…ね、蓮兄さん…」
「何!?」
わぁすごい大きい声ー…珍しいなぁ。
「寝て、いい…?眠い…」
「駄目!もう少し起きてて!」
何で?いつもならいいよって言ってくれるのに…
「俺、帰ります、ね。」
「あ…ね、しょ、た…」
「何?」
「明日、来て、ほしい…」
「…分かった。全員で来てやるよ。」
「ん、ありが、と…」
「じゃあ、お邪魔しました。明日また来ます。」
「おん!じゃあな翔太くん!」
こうして翔太は帰っていった。
「さてと、熱測ろう。」
そう言ってラウ兄さんは体温計を俺の脇に差し込んだ。暫くすると測り終わった音が鳴った。
「あ、めめ。何度だった?」
「38.4」
「わお。」
「とりあえずベッド行こか。涼太くん、歩ける?」
「んぅ…」
「ほら、手つないであげるから。頑張って。」
こうして康二兄さんとラウ兄さんに手を繋がれながら自室まで移動し、そのままベッドに横になった。そして額に冷たい感覚がくる。
「~っ、つめた…」
「ごめんね、すぐ慣れるから。」
「うーん…ストレスが溜まってたから体調を崩しやすいのかと思ってたんやけど、単純に体が弱いんやなぁ…」
そう言って康二兄さんは頭を撫でてくれた。その感覚が心地よくてさらに眠気が襲ってくる。
「ね、蓮兄さん…も、寝ていい…?」
「うん、寝ていいよ。おやすみ、涼太くん」
そう言う蓮兄さんの声を聞いた瞬間、気絶するように眠りに付いた。