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五色ーw
「……前原」
「ん?」
「お前……絶対、わざとやってるだろ……っ」
「さぁ?なんのことやら~」
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前原 憂 まえばら うい
1年生
五色 工 ごしき つとむ
1年生
からかいやすい五色君_、 Start
窓から差し込む午後の日差しが、白鳥沢学園の清潔な教室を照らしている。
私の隣、廊下側の席に座る五色工くんは、相変わらず定規で引いたような背筋の伸ばし方で黒板を凝視していた。
(……今日も、気合入ってるなぁ)
私はわざとらしく、自分の机の中をごそごそとかき回す。
もちろん、お目当ての現代文の教科書はすぐそこにあるけれど、今日はそれを「ないこと」にした。
「……ねえ、工くん」
吐息が届きそうな距離まで椅子を寄せ、小声でささやく。
工くんはバレーボールのレシーブ直前のような顔でビクッと肩を揺らし、ぎこちなくこちらを振り向いた。
「な、なんだ前原! 今は授業中だぞ、集中しろと斎藤先生も……」
「教科書、忘れちゃった。……見せて?」
上目遣いでそう言うと、工くんの視線が泳ぐ。
「えっ、忘れ……? お前が? 珍しいな」なんて言いながらも、彼は「しょうがないな!」と誇らしげに、自分の教科書を二人の机の真ん中に置いた。
ガタッ、と大きな音を立てて彼が机を寄せてくる。
私はさらに追い打ちをかけるように、自分の椅子を彼のすぐ隣まで引いた。
「……っ、近いぞ前原!」
「だって、離れてると文字が見えないんだもん。……あ、工くんの教科書、書き込みがいっぱいだね。真面目だなぁ」
「当たり前だ! 俺は次期エースだからな、勉強も疎かには……」
「ふふ、かっこいいね。……でも、ここ。漢字間違えてるよ?」
私が彼の教科書の端を指先でなぞると、工くんは「どこだ!?」と身を乗り出してきた。
その拍子に、二人の肩がしっかりと触れ合う。
「うわっ……!」
「あ、ごめん。……工くんの肩、がっしりしてて強そうだね」
と少しばかりからかってみる。
耳元でわざとゆっくり囁くと、彼の顔は一瞬で真っ赤に茹で上がった。
前を向いたまま固まっているけれど、机の下で握りしめられた彼の手が小さく震えているのが見える。
(ふふ、やっぱり面白い)
「……前原」
「ん?」
「お前……絶対、わざとやってるだろ……っ」
「さぁ? なんのことやら~」
消え入るような声で抗議する彼。
けれど、教科書を隠そうとはしない。
そんな彼の「優しさとチョロさ」が愛おしく思えたのは 内緒 だ