タクトは剣を握り直し、ミカエルと肩を並べて立つ。カーネイジ・ハイドラが再びその巨大な姿を揺らしながら迫ってくる。タクトは深く息を吸い込み、目を鋭く光らせた。
「お前、いつもタイミングよすぎだな、ミカエル。」タクトは歯を食いしばりながら言った。
「英雄は登場するタイミングが大事だからな。」ミカエルはその余裕の笑みを崩さない。しかし、その言葉の裏には、どこか切実なものが感じられた。
「ふん、頼んだぞ、ナルシスト。」
ミカエルは笑みを消し、真剣な表情で剣を振る。「お前が英雄気取りするのはこれが初めてだろうけど、俺はそうじゃない。命を賭ける覚悟はできてる。」
その言葉に、タクトは一瞬だけ目を見開いた。ミカエルのナルシストっぽい態度の裏には、確かに命を賭ける覚悟があるのだと感じ取ったからだ。
カーネイジ・ハイドラの巨大な体が再び動き出す。タクトとミカエルは一気に距離を詰め、その動きを読みながら攻撃を仕掛ける。タクトが一撃を放つと、ミカエルがすかさずその隙を突いて斬撃を加えた。
ハイドラの顔が崩れ、呻き声を上げる。だが、その数はあまりにも多く、簡単には倒れない。
「これだけで倒せるわけがないってわかってるだろ?」タクトは冷静に言った。
「もちろんだ。だが、少しでも弱らせれば、リリスを倒すチャンスができる。」ミカエルの目は冷徹だった。
タクトはうなずき、再び剣を構える。「よし、じゃあ、仕留めるぞ。」
ミカエルも同様に構え、二人は再びハイドラに挑みかかる。
リリスは遠くからその様子を見守っていたが、次第に顔色が変わっていく。カーネイジ・ハイドラが必死に反撃しているにもかかわらず、タクトとミカエルの連携によってその動きが鈍くなり、少しずつ傷ついていく。
「これではいけない…」リリスは眉をひそめ、手を震わせながら呟いた。
タクトは深呼吸をし、全身に魔力を集める。剣に光が宿り、炎のように燃え上がった。「今だ、ミカエル!」
ミカエルはその声を聞いて一気に距離を詰め、空中で回転しながら強烈な一撃を加える。その刃はカーネイジ・ハイドラのうねる蛇のような首に突き刺さった。
「行け、タクト!」
タクトはその隙に、全力で剣を振り下ろす。剣から放たれた雷光がハイドラの身体を貫き、ついにその全身を破壊した。
カーネイジ・ハイドラが崩れ落ち、地面に大きな穴を開ける。煙が立ち込め、周囲は一時的に視界が遮られる。だが、タクトとミカエルは一歩も引かず、息を切らしながら立っていた。
「勝った…」タクトが小さく呟く。目の前の巨大な悪魔が完全に倒されたことに、安堵の気持ちが広がる。
しかし、リリスはその場で笑みを浮かべていた。彼女の眼差しはまだ冷徹で、決して諦めていない。
「面白いわ。だが、ここで終わりだと思っているの?」リリスはゆっくりと歩き出す。
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