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四季side
目が見えない。暗闇の中だ。身体のいたるところが痛くて仕方ない。自分が何をしていたのかもあまり思い出せない。
するとどこからか声が聞こえてきた。
ーーくん
ーきくん
恋太郎「四季君!!!!」
名前を呼ぶ声にはっと目が覚めた。目の焦点が合わないが、声を聞いて何となくレンだということが分かった。身体を起こそうとしたが痛みがそれを邪魔する。
四季「い”った……」
恋太郎「ごめん四季君!ぶつかって落ちて、四季君が庇ってくれて…」
レンの長い前髪で表情が見えなかったが、レンの声はかすかに震えていて、とても焦っていることがわかった。どうにか安心させようと笑ってみせる。
四季「いや、俺が悪ぃよ…皇后崎ばかりに気を取られて巻き込んじまった。マジごめん。」
恋太郎「そんな事言わないでよ。俺ももっと注意してればよかったし。」
お互い謙遜しあっているのがおかしくて顔を見合わせて笑った。相変わらず顔が見えないけど、大きく口を開けて笑う姿が身長の割に子供っぽいな、なんて思っていた。
恋太郎「どうしよ。結構落ちてきちゃったね。」
四季「うーん、とりあえず上まで行くか。」
そうしてまた身体を起こそうとするとレンから鋭く睨まれた。何かしてしまったのかとドキッとした。
恋太郎「なんで体起こそうとするんだよ。俺を庇ったせいでこんなことになってるんだし、俺が背負っていく。」
怒らせたと思いヒヤヒヤしていたのに予想外の言葉がレンの口から出たせいで吹き出してしまった。
恋太郎「え、なになに!?」
困惑しながらもこちらを気遣う様子が少し可愛らしく面白かった。なんとなくレンの額に手を伸ばす。そして前髪をカーテンのようにめくると顔が見えてくる。
本人は自信が無いようだがなかなか端正な顔立ちをしていると思う。圧倒的な華やかさや派手さはないが、なんとも素朴な美人だ。今まで気づかなかったが、よく見てみると瞳が青く綺麗だった。深い海のような色だ。
四季「お前やっぱさ、前髪切った方がいいよ。あと俺のことは四季って呼べよ。」
恋太郎「えっと、…わかった。四季。」
ぎこちなさが残っている声ではあったが、親しくなれた気がしてすごく嬉しくなった。
四 季「よし!授業終わったら俺が前髪切ってやるよ!」
恋太郎「え~不安だなぁ」
四季「言ったな~?俺結構自信あるぜ! 」
上へ登りながら他愛もない話をするのはとても心地よくて楽しい時間になった。
続く