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ジバふぶ
第一話「暑い物を好きになろう」
ある夏の日。
ジリジリと太陽が照りつけるさくらニュータウンの公園で、ジバニャンは木陰に座りながら、大好物のチョコボーをポリポリと食べていた。
「やっぱりチョコボーは最高ニャン。暑い日でも、寒い日でも関係ないニャン」
そう言いながら、袋を大事そうに抱えるジバニャン。
その時、周囲の空気が一気にひんやりと冷たくなった。
「……ふぅ」
振り返ると、そこには氷のように美しい妖怪、ふぶき姫が立っていた。
白銀の髪に、少し困ったような表情。
「ふぶき姫!? 急に冷えるからびっくりするニャン!」
「ご、ごめんなさい……」
ふぶき姫は小さく頭を下げると、ジバニャンの隣にそっと腰を下ろした。
だが、その表情はどこか元気がない。
「どうしたニャン? いつものキンキンに冷たいオーラが弱いニャン」
「それが……あつガルルさんたちと、うまく仲良くできなくて……」
その名前を聞いた瞬間、ジバニャンはピンと来た。
「なるほどニャン。暑い系妖怪と寒い系妖怪は、いろいろ大変ニャンな」
ふぶき姫はうつむきながら続ける。
「この前も、一緒に遊ぼうと思ったら“近づくと涼しくなりすぎる”って言われて……。
みんな悪気がないのは分かってるけど……」
ぽつり、ぽつりと語るその声は、とても寂しそうだった。
ジバニャンはチョコボーを一つ口に入れ、しばらく考え込んだあと、ぱっと顔を上げた。
「それなら簡単ニャン!」
「え?」
「暑い物を好きになればいいニャン!」
ふぶき姫は目を丸くした。
「あ、暑い物を……?」
「そうニャン! 暑い系妖怪と仲良くなるには、まず暑さに慣れるニャン!」
「で、でも私、氷の妖怪だし……」
「大丈夫ニャン! まずは練習ニャン!」
こうして、ジバニャンによる“暑さ克服作戦”が始まった。
最初に挑戦したのは、夏の屋台で売っている激辛たこ焼き。
「だ、大丈夫かニャン?」
「い、いきます……!」
ふぶき姫が一口かじった瞬間――
「……!!!」
顔が真っ赤になり、口から冷気が吹き出した。
「つ、冷たっ!? たこ焼きが凍ったニャン!」
「む、無理です……! 熱すぎて……!」
次は、真夏の直射日光の下で昼寝。
「太陽と仲良くなるニャン!」
「……(数秒後)」
ふぶき姫の周囲だけ、雪が降り始めた。
「だめニャン! 逆に涼しくなってるニャン!」
何をやっても失敗続き。
ふぶき姫はしょんぼりと肩を落とした。
「やっぱり……私には無理なのかしら……」
ジバニャンは慌てて首を振った。
「そんなことないニャン! 無理に変わらなくてもいいニャン!」
その時――
「いや〜、今日は暑いな〜!」
元気な声とともに現れたのは、あつガルルだった。
「あつガルル!」
だが、あつガルルはふぶき姫に気づかず、ひたすら一人で喋り続ける。
「この前さ〜、暑い系妖怪だけでパーティーやったんだけどさ〜!
サウナに溶岩風呂に激辛料理! 最高だったぜ!」
その言葉を聞いた瞬間、ふぶき姫の表情が凍りつく。
「……また」
空気が、一気に氷点下へ。
「また! 私抜きで楽しそうにパーティーしてたの!?」
「えっ!? ふ、ふぶき姫!?」
怒りと悲しみが混ざった感情が爆発し、あつガルルは一瞬で氷漬けになった。
「さ、寒っ……!」
「少しは私の気持ちも考えて!」
シーン……と静まり返る公園。
ジバニャンは苦笑いしながら頭をかいた。
「やっぱり、ふぶき姫が暑い物を好きになるのは……
まだまだ遠いニャン」
ふぶき姫ははっとして、凍らせてしまったあつガルルを慌てて解凍した。
「ご、ごめんなさい……!」
「い、いや……俺も悪かったガル……」
気まずい沈黙。
その時、ジバニャンがふぶき姫の手をそっと引いた。
「でもニャン、無理に暑い物を好きにならなくていいニャン」
「え……?」
「ふぶき姫は、ふぶき姫のままでいいニャン。
大事なのは、ちゃんと話すことニャン」
ふぶき姫は少し驚いたあと、優しく微笑んだ。
「……ありがとう、ジバニャン」
その笑顔を見て、ジバニャンは少し照れながらそっぽを向いた。
「べ、別に普通のこと言っただけニャン!」
溶けかけた氷の中で、あつガルルがつぶやく。
「……今度は、寒い系妖怪も一緒にできるパーティー、考えるガル……」
夏の空の下、
少しだけ距離が縮まった三人。
暑さと寒さは違っても、
気持ちは少しずつ、溶け始めていた――。