「そうよ理奈、上手ね」
優しい声色で告げる母。
「さすがこの家系の娘だ」
そう褒める父。
壊れるはずがないと思っていた。幸せな生活。
好きなことを好きなだけと言う生活方針で育てられた私は優しい両親と可愛い妹に囲まれて楽しい生活をおくっていた。
事件はその数日後。
妹が事故で他界した。3歳だった。
急に突っ込んできた車によってあの子はこの世から去ってしまった。
さらに数日後。
こんな会話が聞こえてきた。
「良かった、加奈がいるとめんどくさかったのよね」
「金を積んでおいてよかったな」
「あんなうまくいくとは思わなかったわよ」
「いつ理奈を売ろうか」
「もう少し後でもいいんじゃない?」
「確かに、疑われるのはごめんだ」
「決まりね、準備しといてね」
絶句した。あの事故を仕組んだのはあの優しかった両親だったのだ。
すぐ必要なものを詰めて家を出た。
クマのぬいぐるみとスケッチブック。あと筆記用具。
体力のない私があんなに走ったのはいつぶりだろうか。
気付けば私は知らない町にいた。
「ここどこ…?どうしよう…」
その日はよく雨が降っていた。見たのはアホ毛の少女だけ。
「お前一人か?来いよ!タルト作ってやるからさ」
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