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喉にチューブを通して入れたはずの栄養液。涼ちゃんはそれさえ、どうしても受け入れられなかった。
夜、みんなが少し目を離したタイミングで、
涼ちゃんはひっそりとトイレに向かった。
個室に入ると、小さな指を震えながら自分の喉に差し込む。
(もういらない……全部、いらない……)
何度も咳き込んで、胃の奥から栄養液を吐き出す。
涙も一緒にこぼれ落ちて止まらない。
その後、トイレから戻った涼ちゃんの顔色の悪さに、𓏸𓏸はすぐに気づいた。
「もしかして…吐いたの?」
涼ちゃんは何も言わない。
ただベッドに横になるだけ。 どれだけ声をかけても、視線すら合わせてくれない。
(また、せっかく入れたのに……なんで……)
「どうして……せっかく栄養入れたのに!!」𓏸𓏸の声が怒りで震える。
「お願いだから――ちょっとは頑張ってよ!」
でも、涼ちゃんは何も言わなかった。
話しかけても、反応が返ってくることはない。
𓏸𓏸はその様子にますますイライラし、
悔しさや悲しさに耐えきれず、バタンと音を立てて部屋を出て行ってしまった。
静かになった病室。
誰もいない空間に、
涼ちゃんの塞いだ心の闇だけが静かに残る――。