:みっち視点:
…眠い。超眠い。
ガチで眠い。
「昨日寝とけば良かったぁぁぁぁぁぁ…。」
「タケミっち、大丈夫?」
「大丈夫じゃない!」
「あ、おう…。」
俺は昨日の二件でずっと眠れずにいた。
いや、あれで寝れたら猛者だよ。
「父さん煽っちゃったぁぁ…。」
俺は口に出してそう嘆く。
「まあまあ、誰にでもあることだって。」
「誰にでもあったら困るの!!!」
「えぇ…。」
そして、こんなにキレ気味なのは昨日のアッくんの敵側宣言だ。
正直言って辛すぎる。
やだ。
本当にやだ。
「…今日は休むか?」
マイキーがそう言って俺の手を優しく握ってくれた。
少し心配そうなのは気のせいじゃないはず。
「…そうする。連絡事項は書いて置いておく。」
俺は紙とペンを近くから取って、連絡事項(昨日の敵側宣言と薬のこと)を書いて、自分が座る予定だった場所の机の位置に紙を折って置いておいた。
「じゃあ、俺は自分の部屋にいるから。」
俺はそう言ってすべての情報をシャットアウトして部屋へ籠った。
…数時間後。
「ガチで寝過ぎた…。」
気づけば寝始めて5時間経っていた。
でも、起きたら起きたでまたいろいろ悩まされる。
「どうしたらいいんだろ…。」
そう頭を悩ませていると、誰かが部屋に入ってきた音がした。
俺は急いで顔を隠す。
「あ、起こしちゃったか…?」
マイキーらしき声が聞こえてくる。
俺はまだ寝たフリを続けていた。
起きていたけど、出たくない。
ただ逃げているだけなんだろうけど。
「…気のせいか。」
マイキーはそう言うと、俺の寝ているベッドの近くに浅く座った。
俺はマイキーとは逆の方向を向いた。
今の俺を見たらどんな反応をするんだろう。
心の霧がずっと晴れない。
影が重くまとわりついてくる感覚は、これが初めてではなかった。
そのたびに逃げてきた。
だから輪廻のように繰り返すのかもしれない。
だとしても、向き合うのは相当辛い。
頑張ろう、って頑張れるものじゃないし。
「辛いなぁ…。」
俺は聞こえないようにそう呟く。
その時、俺は後ろからぎゅっと抱きつかれた。
俺はその手をそっと握る。
「やっと話してくれた。」
マイキーはそう言うと、俺に語りかけるように言う。
「タケミっちはすぐため込むからさ、たまには俺らに頼ってもいいじゃん。ね?」
「…マイキーもじゃん。」
「何か言った?」
「イエナニモ。」
マイキーは俺を慰めてくれていた腕を離し、俺の頭を撫でてくれた。
「タケミっちはかわいいもんな。」
その顔がどんな顔だったかは分からない。
でも、幸せなのに変わりなかった。
「かわいくないですよ…!」
俺はそう言うことを言ってマイキーと少しの幸せを分かち合う。
それだけでよかったのかもしれない。
「あ、あのことについて話さなきゃ。」
マイキーがパンと手を叩く。
「何の事?」
俺はベッドから起き上がって聞いた。
「タケミっちの仲間たちの扱い。」
マイキーはそう言ってベッドの上に座る。
俺も隣に座った。
「結局、タケミっち達の仲間は洗脳が解けそうだったらそっちを優先する。けど、無理そうだったら生け捕りかな。」
「なんで生け捕り…。」
「俺らが殺すよりタケミっちが殺した方があいつらも本望だろって結論。」
俺とタケミっちは別行動だからな、とマイキーは最後につけ足した。
「確かに…。とはならないですよ、俺精神崩壊しそうです。」
俺は冷静にそう言う。
だってそうしたら関わってくれた人を一日で6人も殺すことになるんだよ?
無理だよ?このお豆腐メンタルにはキツい。
「で、薬に関しては春千夜に漁ってもらってる。あいつ薬には無駄に詳しいから。分かれば対策できるし。」
マイキーはそれだけ伝えると「じゃ。」と言って眠ってしまった。
俺はその隣に寝そべる。
改めてみるとマイキーは本当にきれいだ。
俺はマイキーの髪をちょっと触る。
こんな人がたくさんの悩みを抱えていて、腹の中にどす黒い物を飼っているとは思えない。
「ちゃんと、守りますよ。」
俺はそう言って立ち上がる。
「春千夜くんを手伝ってあげるか。」
俺は少しの怯えを捨てて、外へ踏み出した。
マイキー殺害まで あと
8日――