テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『それぞれの夜』
同じ空の下。
同じ時間。
でも、別々の部屋で——
それぞれが、同じ人のことを考えていた。
部屋の床に、服が散らばっている。
「……ちがう」
鏡の前で、首をかしげる。
パーカー。
却下。
シャツ。
これも、違う。
「先輩、これ見たらどう思うかな……」
誰もいないのに、
小さく呟いてしまう。
ベッドに座り込んで、スマホを握る。
先輩のトーク画面を開いては、閉じて。
また開いて、閉じて。
——送らない。
送れない。
「……俺、うるさくないよな」
ぽつり。
今日だけは、
いつもみたいに勢いで突っ込めない。
先輩にとっての“初デート”かもしれない。
そう思うだけで、胸がぎゅっとなる。
「ちゃんとしたい……」
床に寝転がって、天井を見る。
しっぽがあったら、
今ごろくるくる回って、
そのあと不安で丸まってる。
「俺さ……」
誰に言うでもなく。
「先輩の隣、似合いたいんだよ」
立ち上がって、
もう一度鏡を見る。
今度は、
少し大人っぽい服。
「……これなら」
小さく、うなずく。
満足したわけじゃない。
でも。
「先輩に会えるなら、がんばる」
その言い方が、
まるで約束みたいだった。
クローゼットの前で、腕を組む。
「……なんでこんな悩むんや」
自分に呆れた声。
普段なら、
適当に選んで終わりなのに。
今日は、違う。
頭に浮かぶのは、
にこにこ笑って、
距離が近くて、
すぐ懐いてくる後輩。
「ちぐ……」
名前を呼んで、
なぜかドキッとする。
「あいつ、どんな顔で来るんやろ」
想像して、
勝手に照れる。
スマホを見る。
通知は、ない。
——静かすぎる。
「……珍しいな」
いつもなら、
「先輩!」って
何かしら送ってきてるのに。
「緊張しとるんかな」
そう思った瞬間、
胸が、少しだけやわらぐ。
「……かわええやつ」
ぽそっと。
服を選びながら、
ふと手が止まる。
「ちゃんと、楽しませたれるかな」
ちぐが、
全力で来るのは分かってる。
だからこそ。
「俺も、ちゃんとせな」
鏡の前で、
少し姿勢を正す。
——後輩やけど。
——犬っぽいけど。
大切にしたい相手だって、
もう分かってる。
ちぐさは、布団に倒れ込みながら。
「……先輩」
ぷりっつは、電気を消す前に。
「……ちぐ」
同じ名前を思い浮かべて、
同じ時間に、少しだけ眠れなくなる。
明日。
やっと会える。
その事実だけで、
胸が、いっぱいだった。
——でも。
お互い、まだ知らない。
明日、どんな顔で待ち合わせるのか。
どれだけ距離が近づくのか。
その続きを、
考えただけで。
眠れない夜は、
まだ終わらなかった。
♡>>>>2500
コメント
9件
犬系ちぐ可愛い〜っ! デート..どうなるんだろっ..?!
ん ~ ッ!!待ってましたっ ! 👊🏻💞 とうとう デ ~ ト編 が近くに .. 🫶🏻🌀 2 人がどういう気持ちになってどう近付くのかほんっと ~ に楽しみです .. ! ! 服悩んで 、寝れなくなって .. 2 人共緊張してるのがこっちまでしっかり伝わってくる ... 🥹💕