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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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初夏の眩い陽光が、ソネリーノ・ファミリー総本部の最上階に位置するドン・ソネリーノの執務室へと容赦なく降り注いでいた。
しかし、その広大で豪華な部屋の窓に設えられた特注のブラインドは固く閉じられ、室内に奇妙な横縞のコントラストを作り出している。
マフィオソは、巨大なマホガニーのデスクの後ろに直立し、山積みにされた組織の最高機密書類を一枚ずつ精査していた。
「ボス、昨夜押収した敵対組織の密輸ルートに関する書類です。……少々、お疲れのように見えますが」
デスクの前に直立不動で控えるコンシリエーレが、シルクハットの下の鋭い目を微かに細め、ボスの様子を窺うように告げた。
「……何でもない。ただの寝不足だ。続けてくれ」
マフィオソはいつもの低く冷徹な声を維持しながら、縦縞の入った漆黒のフェドラ帽を目深く被り直し、真っ黒なコートの襟を限界まで高く立てた。
白いシャツの喉元には、一分の隙もなく斜め縞のネクタイが締め上げられ、ドンの完璧なポーカーフェイスを演出している。
しかし、そのコートの裾の下、彼の引き締まっ た脚は、衣服の奥でわずかに ‟震えて” いた。
なぜなら今、その重厚なマホガニーのデスクの直下――部下たちから完全に死角となった狭い暗闇の中には。
黒いスーツのネクタイを緩め、コインを弄びながら楽しげに目を光らせる男――チャンスが潜んでいたからだ。
「――次の案件ですが、南区の統合カジノにおける配当金の件で、カポレジームからの報告書が届いております」
コンシリエーレの冷静な声が室内に響く中、デスクの下の暗闇から、チャンスの長い指先が音もなく伸びてきた。
チャンスの手は、マフィオソの細い足首をなぞり、タキシードのズボンの裾からゆっくりと這い上がっていく。
「っ、……く」
マフィオソの喉から、微かな、しかし押し殺されたくぐもった声が漏れた。
「ボス? やはり体調が優れないのでは」
「問題ない、と言っている……っ。話を、続けろ……」
マフィオソはデスクの端を両手で強く掴み、指先が白くなるほどに力を込めた。
ベストのポケットから滑り落ちかけた金色の懐中時計のチェーンが、ジャラリと微かに揺れたが、その音はコンシリエーレが書類をめくる音にかき消された。
もし、今ここで一歩でも後ろに退がれば、机の下の略奪者にすべての主導権を握られる。
だが、このまま直立を続ければ、廊下で鉄パイプをガチガチと鳴らしているカポや、バールを構えてボスの部屋を覗こうとしているソルジャーのすぐ目の前で、自分はどのような翻弄を受けることになるのか――。
白昼の要塞の真ん中で、完璧なドンのプライドを賭けた、息の詰まるようなチェイスが始まった。
コンシリエーレが淡々と次なる書類を読み上げる中、デスクの下の情事は、マフィオソの理性を内側から焼き尽くすほどの熱量を帯びてエスカレートしていった。
チャンスの掌は、ズボンの裾を通り、マフィオソの太ももの内側へとじわじわと滑り込んでいたのだ。
チャンスの長い指先が、マフィオソの熱を帯びた肌を容赦なく、そして力強く愛撫し、さらに上へと高揚を煽り立てていく。
「ん、……ぅ……っ」
マフィオソはフェドラ帽の下で唇を血が出るほど強く噛み締め、呼吸のテンポが狂うの
を必死に堪えた。
「こちらのカジノの利権ですが、チャンスが、再び裏で糸を引いている形跡がございます。見つけ次第、今度こそ完全に四肢を叩き折るべきかと」
「……ああ、……好きに、……しろ……っあ」
チャンスの指先が、マフィオソの最も敏感な衝動を一気に跳ね上げた瞬間、彼の身体はビクリと弓なりに跳ね上がった。
机の下では、チャンスがマフィオソの衣服を音もなく緩め、その肌へ直接、熱い吐息を吹き付けていた。
男特有の濃密な煙草の香りが、デスクの下から這い上がってボスの脳髄を痺れさせる。
「っ、……は、……ぅ、ん、……ダメ、だ……っ」
マフィオソはコンシリエーレに見えぬよう、デスクの陰で自らのコートの襟を強く掴み、声を堪え続けた。
すぐ目の前には、自分を神聖なるドンのように祀り上げる最側近がいる。
ドアの向こうには、ボスのために命を捨てる覚悟の部下たちがひしめいている。
そのすぐ10センチ裏側で、彼らの絶対的な首領(ドン)は、宿敵であるチャンスの危険な愛撫によって、ドロドロに融かされ、衣服の境界線をすべて失おうとしていた。
チャンスはマフィオソの自由を奪うように、彼の足首を自らの脚で挟み込み、さらに激しく、その指先で熱い波を送り続ける。
「あ、……ぁ、……チャンス、……もう、……っ!」
マフィオソの限界を察したかのように、チャンスの指がさらに深く、容赦のない速度でその昂りを突き上げた。
「ん、……っ!? ――ふ、……ぅ、あ……っ!」
マフィオソはついに耐えきれず、デスクの上に両手を突いて激しく喘いだ。
彼のポケットから完全に滑り落ちた金色の懐中時計が、ジャラリと大きな音を立てて床で跳ねる。
「ボス!!」
コンシリエーレが驚愕して書類を落とし、デスクの裏側へと一歩踏み出そうとした、まさにその時だった。
マフィオソは最後のドンの理性を振り絞り、鋭い眼光でコンシリエーレを射抜いた。
「下がれ、コンシリエーレ!……私は、少し目眩がしただけだ。……今すぐ、全員を連れて、この部屋から退室しろ。……命令だ」
その声は、いつもの冷徹な威嫌に満ちていたが、微かに掠れていた。
コンシリエーレは不審そうにシルクハットを直したが、ドンの絶対的な命令に背くことはできない。
落とした書類を拾い上げると、慇懃に一礼した。
「……失礼いたしました。では、これからの1時間は、一切の立ち入りを禁じ、私がドアの前で警戒に当たります」
重厚なマホガニーの扉が、バタンと閉まり、室内に完全な錠の音が響き渡った。
扉が閉まった瞬間、マフィオソの身体からすべての力が抜け、デスクの上に崩れ落ちた。
「……ハハ、最高のポーカーフェイスだったぜ、ボス。流石は裏社会のドンだな」
デスクの下からゆっくりと這い出てきたチャンスは、衣服の乱れなど微塵もなく不敵な笑みを浮かべ、床からマフィオソの黒いフェドラ帽を拾い上げた。
マフィオソはデスクの上に仰向けに倒れたまま、はだけた白いシャツの間から、激しく上下する胸元を晒していた。
斜め縞のネクタイは乱され、上着も緩められたまま、彼の肌にはチャンスの情熱によって刻まれた無数の鮮やかな痕が、昼の陽光の下で生々しく浮かび上がっている。
「貴様、……最初から、これを狙って……っ」
「ゲームの基本だろ? 誰もが絶対に安全だと信じている要塞の真ん中で、一番高貴な獲物をハメ殺す。これ以上のイカサマ(快感)はないさ」
チャンスはマフィオソの顎を優しく、しかし拒絶を許さない力で掴み上げると、その不器用な唇に、今度は深く、優しく口づけを落とした。
「……ん、……ふぅ、……っ」
廊下からは、ボスの静養を守るため、「一歩も近づくな!」と他の部下たちを怒鳴り散らすコンシリエーレの冷静な声が微かに聞こえてくる。
自分を完璧に守護しているはずの部下たちの完璧な愛の裏側で、マフィオソは、宿敵であるチャンスの腕の中に完全に捕らえられ、夕日がブラインドの隙間から部屋を赤く染め上げるまで、そのすべてを翻弄され続けるのだった。
数時間後、チャンスが煙のように部屋から消え去った後。
マフィオソのデスクの上には、一枚のトランプのカードが置かれていた。
カードは「クローバーのエース」。
その裏面には、チャンスの乾いた筆跡が残されている。
『白昼のオフィス・セッションは、俺の完全勝利だ。
お前のその、過保護な部下たちの前で声を堪えていた最高の素顔は、他の誰にも見せないでおいてくれ。
次はお前のベッドの奥深くで、もっと激しいトコまで暴いてやるよ。 ――チャンス』
「……っ、あの、底意地の悪いペテン師が……っ!」
マフィオソは顔を耳の裏まで完全に真っ赤に染め上げ、そのカードを握りつぶし て立ち上がった。
衣服を完璧に整え、斜め縞のネクタイを限界まで強く締め上げる。
いつもの「冷徹なドンのポーカーフェイス」を完成させ、彼は再び、部下たちの重すぎる愛が待つ、終わりのない裏社会の戦場へと足を進めるのだった。