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「ラズール!」
愛しい人が俺の名を呼び身体を起こしてくれた。俺の肩に触れる白い手をソッと握りしめて話しかける。自分でも驚くほどの優しい声が出た。
「フィル様…いらっしゃってたのですか?いつここに?体調はいかがですか?
「何言ってんの、僕は元気だよっ!ラズールこそ寝てなきゃ。怪我をして熱まで出てるんだからねっ」
「もう大丈夫ですよ」
「そんなことないっ。まだ手が熱いよ」
必死な様子が可愛い。俺のために必死になってるのかと思うと嬉しい。
フィル様を見ているといつもそうなのだが、顔が無意識に|緩《ゆる》んでしまうのだ。フィル様が「なんで笑ってんの」と怒っている。
「久しぶりに顔を見れて嬉しいからです」
「少し前に誕生日をお祝いしただろ」
「あれから何日経ってると思ってるんですか」
「一ヶ月も経ってないけど」
「俺は毎日でも会いたいのです。ところでフィル様、少し痩せましたね。元気だなんて嘘をつかないでください。俺に嘘はつけまけんよ」
「でも…今のおまえよりは元気だよ」
「俺はすぐに回復します」
「ラズールこそ嘘つかないで。ねぇラズール…僕のために無茶したんだって?ありがとう」
フィル様が俺を抱きしめた。柔らかい感触にいい匂いがする。こんなことをされたら、どんな薬や治癒よりも効くというものだ。
俺はフィル様の背中を撫でながら、白い耳に唇を寄せて|囁《ささや》く。
「聞いたのですか?」
「うん、ゼノから全部聞いた。ラズールは、もう僕に仕える必要はないんだよ。自由にしていいんだよ。なのに…僕のことばかり考えて行動してくれる」
「当然です。俺は、あなたから離れましたが、俺の主は生涯フィル様だけと決めています」
「決めてるの?」
「はい」
「ふふ、ラズールらしい」
フィル様が、柔らかく笑って立ち上がる。そして俺の腕を引くと「早く休んで」とベッドへと引っ張った。
俺はフィル様の手を掴んで離し、両手で包み込む。
「ラズール?」
「フィル様こそ、どうぞお休みになってください。俺はやらなければならぬことがある故」
「何するの?」
「薬を作るのです。…ところでここは、まだデネス大国ですか?それともフィル様がいらっしゃるということは」
「ここはバイロン国の、リアムの…王族の城だよ」
「そうでしたか」
バイロン国に戻っていたのかと、俺は安堵した。