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この異界の中心に生える百メートル程もあるような高さの大樹、その近くで戦闘が起きている。


「少し……見てみるか」


俺は意識を集中させ、その戦場に転移した。



異界の森の最奥部。大樹に囲まれた円形のフィールド。太陽の光が差し込むそこには、樹皮の鎧を纏い、体から緑の葉を生やす灰色の肌をしたオークが居た。目は緑色に輝き、頭には葉の冠が乗っている。

また、木々の間から沢山のオークがそれを観戦している。隙を狙っている訳ではなく、本当にただ見ているだけのようだ。


「あれは……あっちでは見たことが無いな」


そのオークは人間基準では十分太いが、オークにしては細身で、しかも長身だった。その手には二メートル程もある皮を剥いだ木のような白い柱状の棒が握られていた。植物を操り、強靭な肉体を持つ的なことが書かれていた筈だ。


「ボグ・オーク、だったか」


そのオークと相対する人間。それは黒い短髪の少女だった。手にはボロボロに錆びついた刀を握っている。なんなら、服もボロボロだ。穴だらけの薄汚れた黒いTシャツとズボン。髪もぼさついていて、少しみすぼらしく見える。


「ブォ」


そのオークが棒を地面に叩き付けると、少女の足元から根が伸びてその足を掴もうとする。しかし、少女はそれを察知した瞬間に逃れた。


「ブォォ」


もう一度オークが棒を叩き付ける。今度はオークの足元の地面から無数の巨大な蔦が生え、少女を捉えようと伸びた。しかし、少女は華麗な身のこなしで全てを躱し、ボグ・オークに迫る。


「しッ、ヤァッ!」


斬りかかる少女。ボグ・オークはそれを受け止めようと棒を構えるが、刀はそれをすり抜けるように避けて灰色の体を斬りつけた。皮膚が裂け、黒い血が噴き出す。上手いな。


「ブォォ」


ボグ・オークはその傷を気にすることもなく棒を振り回しながら少女に迫る。


「ふッ!」


少女はその棒を華麗な身のこなしで回避しながらその棒の上に乗り、そのままボグ・オークに斬りかかる。


「やぁッ!」


「ブォオッ!?」


少女の錆びついた刀はボグ・オークの目を斬りつけ、その視力を奪った。


「ハァ、ハァ……決め、るッッ!!!」


片目を抑えるボグ・オークに斬りかかる少女。しかし、その瞬間オークは醜悪な笑みを浮かべた。ボグ・オークは振り下ろされるそれに、思い切り白い棒を振り上げた。


「硬いな」


ガチン、木とは思えないような音を出して刀を弾く棒。武器を弾かれ、衝撃で後ろに仰け反る少女にボグ・オークは白い棒を振り下ろす。


「ッ!!」


後ろに仰け反り、足元が不安定な状態からでは回避は間に合わない。少女はそのボロボロの刀を横に構え、白い棒を受け止めようとした。


「ブォオッ!!」


「ッ!」


一瞬だけその衝撃を受け止めた刀だったが、既に錆びつき、くたびれていたそれは遂に寿命を迎えた。その刀身は粉々に砕け散ってしまった。


「マズイな」


刀を犠牲にしてボグ・オークから距離を取ることは出来たが、逃亡は彼らを囲むオーク達が許さないだろう。この決闘はどちらかが死ぬまで終わらないということだ。


「……もう少し、見てみるか」


少女にはどうやらかなりの技量がありそうだった。その技術に身体能力……魔素が追い付けばものになるだろう。

しかし、彼女に今足りないものは明白だ。


「ブォオ……」


「ッ!」


ジリジリと弄ぶように距離を詰めていくボグ・オーク。少女は後退りするが、背後に大量のオークが近付いているのに気付き、足を止める。


「ッ!?」


少女の目の前に、ズサリと一本の刀が突き刺さった。


「刀……?」


黄金の刀身に、黒い柄。黄金の鍔には黒い桜の花びらが四つ、墨を落としたように描かれていた。まるで芸術品のようなそれは刀としては少し小ぶりで、小太刀と言えるものだ。しかし、彼女の身長にはこれくらいが丁度良いだろうと思い、この刀を選んだ。


「ブォォ……?」


不思議そうに首を傾げるボグ・オーク。しかし、少女は迷いなくその刀を地面から抜き、一瞬でボグ・オークまで距離を詰め、切り上げた。


「ブォォッ!」


驚きつつも、何とか防御を間に合わせるボグ・オーク。横に構えた白い棒は刀の進路に立ち、その太刀筋を阻み……真っ二つに両断された。


「ブ、ブォ――――ッ」


当然、その棒の先に居るボグ・オークも刀の餌食となり、頭を真っ二つに切り裂かれた。


「……何、これ」


少女は呆然と自分の持つ刀を見る。


「ブ、ブモォッ!?」


「ブモォッ、ブモォッ!」


オーク達のボスを倒した少女。決闘は確かに終わった。しかし、それを見届けていたオーク達は彼女をただ見過ごしてはくれないようだ。


「ブモォッ!!」


「ブモォオオオオオッ!!」


リーダーを倒されたオーク達。残ったのは外敵のみ。自分達の縄張りを守る為、彼らは武器を持って走り出した。


「ッ、この量は……ッ!」


冷や汗を浮かべる少女。彼女を囲むオークの数は優に百を超えているだろう。しかも、その中にはノーブルオーク等の上位種の姿もある。


「……やるしか、ないッ!!」


駆け出した少女。その手に握られた黄金の刀を振り抜くと、目の前のオークの首が呆気なく飛んだ。だが、その間にもオーク達は少女に迫っている。


「ッ、もう囲まれてる……ッ!」


立ち止まり、周囲を確認する少女。そこに全方位から襲い掛かるオーク達。一斉に振り下ろされる棍棒や槍を避けきるのは至難の業だ。


「ッ!?」


絶体絶命の状況。その瞬間、彼女の持つ刀の鍔に描かれた黒い桜の花びらが四つ、刀から飛び出してひらりと宙を舞った。

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