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放課後の校舎裏。
取り壊し予定のボロ部室『なんでも屋・シュレーディンガー』の扉が、今日も勢いよく蹴り開けられた。
坂田「新八ぃ~、今日の依頼メモはどこだよぉ~……ってかお前またメガネ曇ってんじゃねーの? 見えてねぇだろーが」
坂田誠(自称・銀さん)は、だら~んとソファ(元は家庭科室の廃棄予定だったやつ)に沈み込みながら、木刀(マジックで「洞爺湖」と書いてある)を膝の上でトントン叩いている。
目が完全に死んでいる。
新「坂田先輩……その『銀さん』口調、今日も完全に消滅してますけど……」
志村新(メガネ)は、すでに胃薬を舌の上で転がしながらため息をつく。そこへ、いつものように音もなく現れる影。
レゼ「ふふっ……誠くん、今日も死にそうな顔してるね。ねえ、一緒に学校抜け出して、どっか遠くで花火でも上げない?」
中野渚(自称・爆弾の悪魔レゼ)は、誠の首筋に指を這わせながら囁く。
指先には、細い導火線がくるくると巻きついている。いつもの小悪魔スマイル。
坂田「…………おいレゼ。俺の首に導火線巻くな。マジでやめろ」
レゼ「えー? でも誠くんって、首の後ろとか弱いよね?ここ、こうやって……」指がスッと襟足をなぞった瞬間、誠の肩がビクンッと跳ねる。「っ……! お、お前……!」「ほら、反応可愛い」「……お前、俺のこと本気で殺す気か?」「殺さないよ? ただ、ちょっとだけ壊したいだけ」
そのやりとりを横で見ている新八の顔が、すでに死にかけている。
新「…………あの、依頼の話に戻っていいですか?」
坂田「ん? ああ、そうだった」
誠はようやく体を起こし、木刀を肩に担ぐ。
坂田「で、今日の依頼ってなんだっけ?」
新八がメモを読み上げる。「『文化祭の出し物で使う花火が、なぜか全部導火線だけになって届いた。犯人を探してほしい』……だって」一同、シーン。「……レゼ」「……ん?」「お前か?」「違うよぉ? 私だったら全部爆発させてるもん」「それ自白じゃねーか!!」新八の全力ツッコミが部室に響き渡る。しかしその直後、誠の背後でカチッ、という小さな音。レゼが、誠の制服の襟に小さな花火の束をクリップで留めていた。「え、何これ」「文化祭用の特別サービス。誠くんが走ったら、シュパパパパーンってなるよ?」「……は?」「逃げたら爆発。でも逃げなかったら……私がもっと近くで、誠くんの弱いところ、全部知っちゃうかも」レゼの瞳が、ほんのり赤く光った(気がした)。誠は一瞬固まり、「……新八」「はい?」「俺、今から全力で逃げるわ」「ええええ!? いやいやそれ絶対ヤバいって!!」「黙れメガネ!! 俺は万事屋の銀さんだ!! こんな脅しに負けるかよ!!」そう叫んだ瞬間、誠は部室の扉を蹴破ってダッシュ。シュパパパパパパーン!!小さな花火が背中で次々炸裂し始める。「うわあああああ!! 熱い熱い熱い!! けどなんかちょっと気持ちいい!!?」「先輩! それ完全に変態の領域に入ってます!!」新八の絶叫も虚しく、誠は校舎の廊下を爆走。後ろからレゼが、優雅に追いかけてくる。「待ってよぉ、誠くん~。
まだ導火線、たくさん余ってるんだからぁ」その背後で、新八が胃を押さえながら呟く。「……俺、メガネじゃなくて胃薬が本体になりそう」
そして文化祭当日。屋上に逃げ込んだ誠は、息を切らしながら木刀を構えていた。そこに現れたのは、なぜか花火の矢じりを大量に抱えたレゼと、
なぜか「犯人逮捕!」と書かれたたすきを巻いた新八。「誠くん、やっと捕まえた」レゼがにっこり笑って近づいてくる。「待て待て待て、俺は悪くねぇ! 俺は依頼を受けてただけだろ!?」「ううん。
誠くんが逃げなきゃ、こんなに楽しくならなかったよね?」レゼの手が、誠の頬をそっと撫でる。「だから……ご褒美、ちょうだい?」「ご褒美って何だよ……!」次の瞬間、レゼは誠のネクタイを掴んで引き寄せ、
耳元で囁いた。「今日は……私と新八くん、どっちが先に誠くんの『銀さん』を壊せるか、勝負しようよ」新八「え、僕も!?」誠「……は?」屋上には、花火の残骸と、
完全に理解を放棄した高校生二人が取り残された。そして誠は、今日もまた、
「俺はただの怠け者の甘党だ」という自己認識を、
盛大に更新させられていくのであった。