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君を愛せなかった僕へ。
僕を愛せなかった君へ。
一つの愛しか許されないのならこの世に生まれてくるんじゃなかった。
それでももう一度君と出会いたいと思う。
愛なんてもう二度と知りたくない。
12月の寒いある日、外は雨が降りこめる中男はエアコンもつけず無機質な部屋に佇んでいた。殺風景な部屋に呼吸音が大きく響く。男は家具や私物をすべて売り払っていた。理由は、あと数時間ほどで息を切らしながらここに来るであろうある人のためだ。最後の最後まで彼のことを考えている自分に嫌気がさす。男は小さく息を吐いた。窓の外に視線を向けると、町に霧のような靄がかかっていた。死を迎えるには打ってつけの天気だ。誰も愛せなかった最低な男に快晴などもったいない。雨粒が雨粒を飲み込みながらゆっくりとガラスの表面を伝っていく。男はそっと指でなぞった。だけど突然、雨粒は急激に落ちていった。見失ってしまった。しばらく呆然としていたが、そんなことどうでもよくなって再び視線を外の景色に戻した。眼下にはいくつもの車やバスが次々と流れていた。この光景ももう見られないと思うと、すべてが愛おしく感じる。
突然ポケット中の携帯が震えた。誰からの電話かは携帯を見ずともわかる。男は着信には応えず、外を眺め続けた。メールの着信音が鳴る。
『ドンヒョガ、今どこ?』
無視した。
携帯が立て続けに震える。冷え切った指で画面を叩くと、「さよなら」とだけ返した。すぐに既読がつく。きっと今頃慌てて家を飛び出して走り出したところだろう。傘もささずに。人の目も憚らずに。
でも絶対に間に合わない。
ドンヒョクは振り返ると、唯一部屋に残っている椅子に向かって歩いた。そして徐に足をかける。ロープに手を伸ばしながら考える。
あなたに何ができるの?
どうして助けようとするの?
ドンヒョクは考えるのをやめた。最期に考えても思考は残らない。生きている間に答えが出なかったものを今更考えたって仕様がない。
足が宙に浮いた瞬間、ぐっと喉のが締め付けられた。酸素が足りなくなって、血管という血管が悲鳴をあげだす。むずがゆい刺激が全身を駆け巡りどんどん苦しくなっていく。でも、どこか心地よかった。涙で視界が滲んでいく。
あぁ、もうすぐだ。
さようなら、マクヒョン。
おまたせ、ロンジュン。
ドンヒョクはゆっくりと意識を手放した。
こんにちは。
今回テラーでも書き始めたのですが、プリ小説の方でも「餅ゴリの女」という名前で活動しています。
お話の内容はほぼ同じですが、気になる方はそちらもチェックされてみてください。
趣味程度なので更新は非常にゆっくりです。
今回これを読んでくださった読者様ありがとうございます。
作者