元貴side
僕が恐る恐る後ろを向くと、
若井の顔が僕の肩の上にあり、
僕の唇と若井の唇が重なってしまった。
若井の柔らかい唇の感触が伝わる。
一瞬頭の中が真っ白になり、ようやく我に返る。
僕…今、若井に…
考えただけでドキドキして顔が熱くなる。
唇が重なる感触で目を開けた若井は、
顔を赤く染めた僕を見て若井も頬を赤く染めた。
滉斗『っ〜///』
元貴『っ…ごめん、////』
僕はそう言って若井から離れて音楽室を出た。
僕は男子トイレの洗面所の前に立って
自分の顔を見た。
…やっぱり、顔が赤くなってる、。
興奮しているのか、恥ずかしいのか
分からない表情をしていた。
…なんで、僕は苦手な陽キャの若井に
好意を抱いて、キスなんかして、ドキドキして…
なんで同性のクラスメイトを好きになるの?!
訳分かんない…!!!
調子狂うなぁ…本当に…!
意味が分からなすぎて溜めていた涙が溢れる。
“お前ゲイなの?キモw”
“気持ち悪い…近寄らないで”
“ありえない!どっか行けよ!”
中学の時に言われた言葉が頭の中に思い浮かぶ。
中3になって少し落ち着いて、
やっと…やっと、
女子のことを好きになれたのに…
また振り出しじゃん…こんなの…
自分が自分じゃないみたいで涙が止まらない。
涼ちゃんも心配してるだろうから、
早く帰らないといけないのに、涙が止まらない。
若井にだって謝らないといけないのに…
僕は声を殺して泣いた。
思い出すと止まんないなぁ…
若井の事なんて考えなければ良かった、
僕は教室に置いておいたカバンを持って
靴箱へ足を運ぶ。
涼ちゃんには申し訳ないけど、スマホで
“体調が悪くなった”と嘘のメッセージを送った。
…若井と会いたくないな、
こんな顔見られたくないよ、
僕が靴箱のロッカーを開けた時、
僕のロッカーの中に紙切れが入っていた。
紙切れには不器用な字で、
“校門で待ってる”と書かれていた。
誰が書いたかなんて一目で分かった。
絶対若井だ。もう最悪…なんで今なの、
絶対目赤いし…
僕は憂鬱な気分になりながらも校門へ
足を運んだ。校門には背が高くて痩せ型の
イケメン(若井)が立っていた。
はぁ…本当に待ってたんだ…
僕は気づかれないように若井から離れて
校門を出ようとした。
滉斗『あ元貴!』
げ…若井が走ってこっちに来る。
僕は思わずそっぽを向いた。すると、
若井は心配そうに僕を見つめながら言った。
滉斗『大丈夫?目赤いよ、』
元貴『…』
僕は若井に何を言われても若井の目を見る事は
しなかった。若井の目を見てしまったら、
泣き崩れそうで怖かったから。
滉斗『ねぇ…目見てよ』
若井が僕の頬を両手で包んで強制的に
目を見させた。
元貴『っ…泣』
若井の心配してそうな、怒ってそうな顔を
見たら堪えていた涙が溢れた。
若井に僕が泣いてる惨めな所を見られて
最悪な気持ちと、距離が近くてドキドキする
気持ちが混じって、また訳が分からなくなった。
滉斗『…さっきはごめん、』
元貴『っ…グスッ…泣』
若井が僕の頭を撫でながらそう言った。
若井に泣いてる顔を見られたくなくて、
僕は若井の胸に顔を埋めた。
苦手な陽キャの側に寄って、
胸に顔を埋めるのはとても気が気じゃないけど、
今日だけは…今だけは…
若井の側にいたい。
コメント
5件
難しい気持ちだね…そして何故か血が止まらない
複雑な気持ちだねぇ〜もっくん頑張って〜