元貴side
苦手な陽キャの側に寄って、
胸に顔を埋めるのはとても気が気じゃないけど、
今日だけは…今だけは…
若井の側にいたい。
滉斗『よしよし…家まで送ってくよ』
そう言って若井は優しく微笑んで、
僕の隣に並んで歩いた。
いつもより距離が近くてドキドキするけど、
今はなんだか心地が良い。
滉斗『…なんかあったの?』
少しの沈黙の後、若井が口を開いて言った。
悩んでいた事を打ち明けようか迷ったけれど、
僕はまだ内緒にすることにした。
若井なら、若井になら話せるけれど、
まだいいかなって、そう思えた。
元貴『何もないよ…ちょっと思い出しただけ、』
滉斗『そっか…話せるようになったら話して?』
僕がそう言うと若井は勘の鋭い一言を
僕に言った。いつも周りを見て行動する人
だからか、なんでも分かるんだなって思った。
僕は小さく頷いた。
やっぱり、優しいんだよな、若井って…
僕は若井のそういう所にどんどん魅力されて、
惹かれていくのかなと感じた。
元貴『僕家ここだから…ごめんね、わざわざ、』
僕がそう言うと若井はにこっと笑いながら
口を開いて言った。
滉斗『全然!また明日ね』
そう言って手を振り背中を向ける若井の姿が
なんだか寂しくて、悲しくて…
僕は若井の服の袖をグイッと引っ張って
若井を引き止めた。
滉斗『…元貴、?』
今日だけ、今だけ、
ちゃんと若井の目を見て話そうと思い、
僕は思い切って口を開けた。
元貴『…ありがと、』
僕がそう言うと若井はにこっと笑って
僕の頭を撫でて帰って行った。
撫でてくれた若井の手は温かくて、
安心するくらい心地が良かった。
元貴『ただいま…誰もいないけど、』
僕はまだ誰にも打ち明けていない秘密がある。
それは、
僕の両親2人とも他界してしまっていること。
幼い頃に2人とも交通事故で亡くなった。
即死だった。
原因は大型トラックの飲酒運転だった。
真夜中に残業を終えた後、2人で車に乗って
いた所を、交差点で大型トラックが思いっきり
衝突したらしい。
全国のニュースで報道されたと聞いた。
苦さも知らない5歳の僕だったけど、
その瞬間を捉えたニュースは、
僕の頭にしっかりと焼き付けられた。
今でもちゃんと覚えてる。
葬式ではたくさんの人が会場に来て、
僕の両親と皆が別れを告げた。
周りには泣いてる人もいた。
でも僕は泣く事ができなかった。
まだ幼い僕には理解が追いつかなくて、
ただ、白い布に顔を覆い隠されたお母さんと
お父さんを見つめる事しかできなかった。
僕は家にある仏壇を開けてりんを鳴らし、
手を合わせて今亡きお母さんとお父さんに
声をかけた。
元貴『お母さん、お父さん、聞こえてる?
僕こんなに成長したんだよ、
あのね、学校でね、?
若井っていう人にも出会って、
涼ちゃんっていう先輩にも出会って、
…ちゃんとした今を生きれてるよ、
ごめんね、顔出せなくて…
心配かけてごめん、
また、顔出すから…またね、』
仏壇に向かって1人で話すのは
さすがに気味が悪いと思う。
小さい頃の癖で、今でも声に出してしまう。
聞こえてる、?見えてる、?
お母さん、お父さん、
僕、素敵な人に出会えたんだよ、
今度、できたら紹介するね、
僕はそう願って仏壇の扉を閉めた。
なんだか、心のどこかがすっきりしたような、
そんな気がした。
コメント
6件
うわぁぁぁ是非とも幸せになっていただきたい… 若井さん頑張れ…って感じです( ; ; )
(´;ω;`)ウッ……いや……これは…花粉だ…花粉なんだァ……(´Д⊂グスン
元貴〜😭😭😭なんだよお前めちゃくちゃ悲しい話するじゃねぇか😭こっっちまでグッと来ちまったよぉぉぉこれからも頑張れよぉぉぉぉぉぉ😭😭