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ジー、ジー、ジー。


俺は音星の手を握ると、シロの後をシロの後ろ姿だけ見つめて、走る。俺たちの通り過ぎた道路が何か騒がしくなった。


「火端さん?」

「……シロの後ろだけを見ていようよ!」

「後ろが大変なことになっていますよ?」

「ああ……やった! たどり着いた!」


シロがコンビニの玄関ドアにたどり着いた。


音星の手を引っ張り、俺はコンビニへと急いで入った。


「いらっしゃいませー」


殊の外。コンビニの店員も胸の中がぞわぞわして不穏なのだろう。こちらに挨拶してきた。


入り口付近のアイスボックスを開けて、二、三ドライアイスを取り出すと、そのままジュースなどの飲み物が置いてある棚の冷蔵リーチインショーケースへ行く。種々雑多なジュースも持ち出すと、レジへと持って行った。


「火端さん。いっぱい買いましたね。それ、全部入ります?」

「おっとっと、この場で飲んでいこうか?」


俺は勘定を済ませると、すぐに音星を連れて、コンビニの外へと出る。駐車スペースで音星が、夜空を指差した。


「火端さん……ここでも、星々が見えますね。少し休んでいきましょう」

「ああ」


俺と音星は、こぞってクーラーボックスに入りきらないジュースの蓋を開けた。

「ふぅ――」

「はぁ」


思えば、ここ八天街へ来てからまだ一周間しかたっていないんだな。その間に色々なことが起きた。


おじさんとおばさんと、古葉さんに、柿谷さん。霧木さんに、そして、音星とは地獄で出会って、ホントに良かったよ。


俺一人では、すぐにダメだったはずだ。


等活地獄から、もう第六層の……。


これから、焦熱地獄へ行くんだな。


そこは、殺生、偸盗、邪婬、妄語、飲酒に、邪見をした罪人が落ちると言われている。


「もう、いいでしょうか?」

「ああ。ジュースも空になったし」

「それでは、帰ってきたら、きっと八天街は元の姿に戻っていますよ」

「ああ……」


音星の古びた手鏡の光で目を瞑ると、しばらくして、ドンッという衝撃と共に、周囲の気温が急上昇した。

ジュ―ーーーー、という何とも言えない臭いのものが、蒸発するような音がして、目を開けると、眼前に、熱鉄のかまに半透明な人型の魂が、白い煙をモクモクと吐き出しながら漂っていた。


「わっ! 音星! 見るな!! ひえっ!」

「はい? うん?」

音星は俺の近くにいて、すでに目を瞑っていた。俺のそばで、地面に座っているシロも浄玻璃鏡で、この世界へ来ていたようだ。


そこは、熱鉄のかまがいくつも設置されていて、半透明な人型の魂の口から立ち昇る白煙で、時折目の前が見えにくくなる広大な島の中央だった。


はるか遠くの四方に、激しい火柱が昇っている。

獄卒たちが忙しそうに、空から降って来る罪人を熱鉄のかまに押し入れていた。


ボロボロの服を着た罪人は、獄卒によって、熱鉄のかまに焼かれて瞬時に半透明な人型の魂と化す。


ジュッと、辺りから蒸発する音と共に、人が焼ける臭いのする凄まじいところだった。


俺は音星とシロを連れ、暑さに耐えながら弥生を探した。


弥生!


お兄ちゃん地獄へまた来たぞ!


はるか遠くの火柱から火の粉が、風に乗ってこっちまで舞ってきた。

勇気と巫女の八大地獄巡り

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