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「有夏に近付くムシは一匹残らず俺が叩き落とす! あんたなんていつだって潰せるんだ!」
「ヒィィ……」
この場合ツブすって、物理的な意味かもしれない。
社会的立場がどうとかじゃなくて、巨人が人を握りつぶすみたいな。
こうプチッと……。
アタシが心底ビビって、鼻をたらしてしまったものだから、ヘンタイメガネは逆に我に返ったようだ。
アタシの鼻水を見て露骨に顔をしかめた。
き、汚くてごめんなさいね。
でもアンタのせいだろうが。
「出て行ってからもう3時間……。あの可愛い有夏が外になんか出てみろ。たちまち物陰に引きずり込まれてレイプされるじゃないか!!」
……いや、我に返ったわけでもなさそうだ。
「今頃、糞みたいな奴に可愛い太もも撫でさせてるんじゃないだろうな。今夜の宿の為に糞みたいな奴の糞チンコしゃぶらされてるんじゃ……ああ、気が狂いそうだ!」
それから超音波みたいに「キィーーーッ!」と叫んだ。
人ん家で発狂すんじゃねぇ!
いやいや、逆に凄いわ。アンタのその発想が!
「ま、まぁー、まぁまぁ」
アタシとしちゃハハハと笑うしかない状況なわけだ。
「まぁまぁ、落ち着いてください。あの人もそんなバカじゃないでしょ」
じっとりした目つきで、ヘンタイメガネがアタシを睨む。
「いや、あの外見からは想像つかないけど、有夏はもの凄く頭が悪いんだ。信じられないくらい勉強ができないんだ」
「そ、そうなんですか」
え? 薄々は気付いてたけど、何かイヤだな。イメージ崩れたな。
聞きたくなかった情報だな。
「ま、まぁまぁ。お勉強が苦手だとしてもですよ。だからって、すぐにそういったことには繋がらないんじゃないかと。学力と人間性っていうのはイコールじゃないですし……ねぇ」
ちなみに胡桃沢さんは今、いくらくらいお金を持ってるんですかと聞くと、ヘンタイメガネはうーんと唸った。
ご存じ有夏チャンの買い物はネットが中心だ。
現実のマネーはコンビニで使用するくらいか。
「現金がなくなったって言うたびに1万円渡してるから。コンビニでそれチャージして使ってるみたいだけど」
「チクショ…そこだけは羨ましいな」
「は? 何が?」
「イ、イエ、何でも……」
いつ1万円を渡しましたかと聞くと、メガネは昨日だと答えた。
「まだチャージしてないなら、手元に1万円あるわけですし。ヤケおこしたりしないですって。それだけあればビジネスホテルやネカフェにだって泊まれるんだし」
「ネットカフェか!」
叫んでヘンタイメガネは飛び出した。
「え、何ですか。待ってくださいよ!」
後から考えたら放っておけば良かったのに、アタシも慌てて後を追う。
思い返せば、いきなり入ってきて人ん家で発狂して、いきなり出てったヘンタイメガネ、実に失礼な奴だな。
メガネの後について走ってるうちに思い出した。
そういや最寄りのコンビニの向かいのビルにネカフェがオープンしてたわ。
外からは分かりづらいけど、マンガの品ぞろえが良いらしくてアタシも今度行ってみようと思ってたとこだよ。
たしかビルの7階と8階部分を使ってるんだっけ。
見晴らしが微妙に良いとか、微妙な階だから家賃が抑えられて利用料金が安いとかいう噂を聞いたっけ。
アタシたちはそこへ向かった。
エレベーターで受付のある7階に。
ヘンタイメガネはソワソワして足踏みしている。
「あれ、アタシ、家のカギ閉めてきましたっけ」
急に不安になって聞いてみるも、軽く無視される。
アレ? 急いで飛び出してきたもんだから、ちゃんと鍵をかけたか記憶にないぞ?
いつもなら鍵閉めたあとにノブを引っ張って確認するんだけど、今回はそれをやってない。
ということは鍵もかけてないってことじゃ…?
「あの、アタシ、カギかけてました?」
果敢にも2回聞いたが、2回とも無視された。
とられて困る物もないんだけど、急に人の家に押し入って来るこういう変な奴もいることだし、今度から気を付けなきゃな。