コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
日本外務省の朝霧 武雄だ。上司に命じられてアメリカへ渡り、異星人対策室へ出向となって訳も分からずケラー室長と一緒に荷物整理に駆り出された。
大変な作業ではあったが、その間にケラー室長から一通り事情の説明を受ける事が出来た。
つまり、ここ数日話題になっている例の天使のような異星人との対応をアメリカ政府が独占していると思われたくないので、外務省を通じて日本政府へ協力要請がなされたのが始まりらしい。
何故日本なのかって?政治と言うやつさ。戦後の関係を考えれば分かることだ。我が国は、まあ……断ることはできない。
だが、誰を出向させるかで政府は揉めた。下手な人間を送り込めば、逆に不興を買ってしまうことになる。それは分かるんだが、何故私が選ばれたのかと小一時間問い質したいくらいだ。
ただ、全世界で注目を集めている異星人ティナさんと会えたのは望外の事ではあったがな。彼女から労いのために渡された栄養ドリンクのお陰でスーパー野菜人になってしまったが。
……いやまあ、かめ◯◯波を打てたのはロマンだったがね。
ティナだよ。異星人対策室のビルが短時間で模様替えして、朝霧さんがまるで前世で見てた野菜人みたいになってしまったのは、またしても私のやらかしによるものだと判明した。
「ごめんなさーーーーーーいっっっ!!!!!」
地球に来て二度目の土下座である。しかもたった二日間でこの醜態、どうすれば良いのか。
『実に興味深いデータです。毛根へのダメージは見られませんが』
「データを収集しないで!?」
「実に興味深いのは、バイタルに異常がないことだな。しかし、あの打ち出された光はいったい何なのだろうか?」
「もう少しサンプルが欲しいな」
学者さん達が集まって話し合いをしてる。当の朝霧さんは、何だか色々諦めたような顔をしてる。
「ティナ、ミスター朝霧の変化だが私とは少し違うようだ」
「ジョンさん?」
「もっと凄かったのよ?時間が経つと少しずつ元に戻っていくみたい」
メリルさんの説明を受けて、私はブレスレットへ視線を向けた。
『バイタル値が少しずつ変化しています。一時間前のバイタル状態に戻る可能性があります』
「元に戻れるの!?じゃあ、ジョンさんは?」
『バイタル値に変化はありませんし、今後も変化がある可能性は低いです』
アリアの無慈悲な宣言にジョンさんは膝をつき、そして朝霧さんはガッツポーズしていた。
いや、分かるよ?見た目ブ◯リーだもん。嫌だよねぇ。とは言え、朝霧さんにもお詫びの品を用意しないといけない。アリアと相談して、変化が起きないように厳選しないと。
ただ、興味深いのは朝霧さんの変化は一時的なものである可能性が出てきたこと。この辺りのデータをお母さんに見せたら喜んで解析してくれそうな気がする。
お母さんは我が母ながらハイスペックで科学から医学、魔法学まで精通している天才だ。その娘の私に魔法の才能が無いのは解せないけどさ。
「ジョンさん、異星人対策室の皆さん。この3日間大変お世話になりました」
気を取り直して、私は皆さんにお礼を伝えた。残念ながらカレンさんは居なかったけど、1ヶ月後にまた会えたら良いな。
「次は1ヶ月後だったか。慌ただしかったが、次回はゆっくり過ごせるようにスケジュールを組もう。国連の場で話をして貰う必要があるけどね」
「任せてください。次は地球を見て回りたいと思うんですけど」
「アメリカかね?」
「もちろんアメリカもですが、他の国も見て回りたいなぁと」
「では日本などどうですか?」
すかさず朝霧さんが提案してくる。外交官だよねぇ。見た目ブ◯リーだけど。
「その辺りは此方で調整しておこう。最大限ティナの要望が叶うように大統領に掛け合うさ。ミスター朝霧、それで良いかな?」
「ええ、本国に掛け合います」
「ありがとうございます、ジョンさん。色々ご迷惑をお掛けしました。その身体や髪も何とかするので、待っていてください」
「無理はしないようにね」
何故かジョンさんは苦笑いして、周りの学者さん達が怪しい目をしてた。
「メリルさん、また次回もお願いして良いですか?」
「ええ、もちろんよ。アメリカの町を見て回りましょうね?もちろん、カレンも一緒よ」
カレンさんは注目を集めてしまったから、異星人対策室の職員としてボディーガードが付くようになったみたい。何だか私生活を縛ってしまったみたいで申し訳ない。
アードとの交流が上手く行けば、注目度も下がる筈だから待っていて欲しい。
ジョンさんの身体、いや優先すべきは髪の毛だね。これもアードの育毛剤を用意しないと。私の知る限りアード人に頭髪が薄い人は居ない筈だから、効果は充分に期待できる。
「ハリソンさんを始め、皆さんにもお別れを伝えたいのですが……」
「申し訳無いが、大統領は急用で参加できなくなったんだ。次の来訪を心待ちにしていると言付かっているよ。何か伝えようか?」
「大変お世話に、そしてお騒がせしてごめんなさいと伝えてください。昨日遅刻してしまいましたから」
「ああ、アレか。やっぱり遅刻したんだね?」
「寝坊しちゃって……ごめんなさい」
「謝らないで、ティナちゃん。カレンの傷を治してくれたから疲れてたのは皆知ってるわ。誰も貴女を責めたりしないわよ。文句を言う人は殴ってやるわ」
「メリルさん……ありがとうございます」
「君はカレンの命を救ってくれた。何があっても私達は君の味方さ。ただ、栄養ドリンクは控えて欲しいかな?」
「ごめんなさい……」
真面目なお話だけど、ジョンさんと朝霧さんの存在感が強すぎて謎の空間が出来てしまってる。
でも、皆さんの優しさに触れられて嬉しい。不始末は何とかしないと!
最後にお別れをして、私はプラネット号へ戻った。ハリソンさんには次会った時に改めて謝罪するとして……今度は本業を頑張らないと!
ブリッジで艦長席に座り、フェルは当たり前のようにオペレーター席に座った。
「アリア、進路惑星アード!寄り道無しで帰るよ!」
『惑星アード、航路設定完了』
「次は一緒に地球へ行こうね、フェル」
「楽しみです、ティナ」
私達は笑顔で言葉を交わし、太陽系を後にした。
こうして人類と異星人による最初の邂逅は終わりを告げた。
この後、人類には大いなる躍進と試練が待ち受けることになるのだが、それを乗り越えたからこそ今の我々が居ることを忘れてはならない。
ジャッキー=ニシムラ(開発中)著
~地球人類飛躍の時~第一章ファーストコンタクトより抜粋