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それは、なんでも屋「シュレーディンガー」にとって最も神聖で、かつ最も危険な日。――「給料日」。
部室の空気は、かつてないほど張り詰めていた。
「……おい、銀さん。今日が何の日か、忘れたとは言わせねェですぜ」
坂田誠が、珍しく「なんでも屋」の主らしくソファにどっしりと座っている。しかし、その手には1円玉が数枚入っただけの貯金箱が握られていた。
「誠……。私、次の爆発……じゃなくて、新しい服を買うために楽しみにしてたの。……嘘は、嫌いだよ?」
**渚(レゼ)**が、冷たい微笑みを浮かべながらチョーカーの金具をカチカチと鳴らす。その瞳は、ターゲットを捕捉した暗殺者のそれだ。
「そうですよ! 僕、この3ヶ月一銭ももらってませんからね!? メガネのレンズの度も合わなくなってきてるんですよ!」
**新八(新)**が机を叩く。しかし、誠はゆっくりと立ち上がり、沖田口調でこう言い放った。
「あー……給料? 何ですかいそれは。俺ァ甘党なんでね、そういう辛気臭ェもんの話は受け付けてやせん。……あ、そうだ。土方(護)の野郎が『マヨネーズの密輸ルートを見つけた』とか言ってたな。ちょっと成敗してきまさァ」
「待てェェ! 逃げるなァァァ!!」
誠は窓から華麗に飛び降り、校庭へと逃走した。
「新八、追うよ。……逃がさない。地獄の果てまで、火薬の臭いで追い詰めてあげる」 「レゼさん、顔が怖い! キャラが本気(マジ)のレゼになってる!」
三人の追走劇は、授業中の校舎を巻き込んで加速する。
「おーおー、熱心なファンサービスでさァ! だが、俺の背中を追うには100年早ェですぜェ!」 誠は木刀を杖代わりに、ハードル走のように障害物を越えていく。
「坂田ァァ! 廊下を走るなと何度言えばわかるんだォイ!」 そこへ運悪く、風紀委員の土方護が登場。
「トシさん、ちょうどいいところに! こいつら、俺の命を狙ってるんでさァ! 盾になって死んでくだせェ!」 「誰が盾だ! 貴様、給料を踏み倒したな! 労働基準法に代わってお仕置きだァ!」
なぜか土方まで追跡に加わり、事態はさらに混迷を極める。
誠は屋上へと追い詰められた。背後にはフェンス。目の前には、怒りに燃える新八、静かな殺気を放つレゼ、そしてマヨネーズを構えた土方。
「……万策尽きた、って顔だね、誠」 レゼが、カバンから大量のクラッカー(連結済み)を取り出す。
「銀さん……覚悟してください。今日こそ、その『なんでも屋』の看板、叩き割ってやりますから!」
「……やれやれ。これだから世間ってのは世知辛ェ」 誠はふっと不敵に笑い、懐から一枚の封筒を取り出した。
「給料がねェなら、これで手を打ちやせんか。……**『大江戸デパート・イチゴパフェ3ヶ月分無料券』**でさァ。……あ、ちなみに残り1名分しかねーですよ」
「「「………………!!」」」
一瞬の沈黙。そして。
「……悪いわね、二人とも。パフェは私のもの」 「いやレゼさん! それ僕の給料の代わりですから!」 「どけェ! それは風紀委員が没収するッ!」
結局、誠が投げた「パフェ券(実は偽造品)」を巡って三人が乱闘を始めている隙に、誠は屋上のダストシュートからスルリと脱出。
「……ふゥ。危ねェところだった。設定を守るのも楽じゃねェ」
夕暮れの公園。誠は一人、自販機で買った安物のイチゴオレを啜っていた。 ポケットには、実はしっかり入っていた「本当の給料(バイト代)」が。
「……まァ、あいつらの必死な顔を見るのが、一番の報酬(スイーツ)ってことでさァ」
口角を少しだけ上げ、誠は夕日に向かって木刀を担ぎ直した。 明日になれば、また「金返せ!」という怒声から一日が始まる。それがこの『なんでも屋』の日常であり、彼らの歪な絆の証なのだった。