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やっと見つけた。僕の美しく儚い透明な海月。
海月しか勝たんっ♡
僕は、ましゅろん。ごくごく普通のミズクラゲだ。僕には密かに期待している夢がある。これまで、全ての生き物は様々な形で進化を遂げてきた。そんな大昔の変化に期待し続けている。僕の夢は人間になることだ。よく、電気クラゲのぽわろから人間の話を聞くことが多々ある。ぽわろは、僕の未来の嫁だ(触れることが出来ないのだが…)。毎日、同じような話でも飽きることはない。親しみと嬉しみを孕んだ物語だ。
僕は物話を聞いているうちに人間と同じ目線を体験したいと思った。母に話すと驚き、黙って僕に小さな小瓶を渡してくれた。
「ありがとう」そう伝えると母は僕のことを抱きしめてくれた。
人間に会いに行くぞ!その気持ちで必死に小瓶の中身を自分の傘に振りかけた。見る見るうちに僕の身体は大きくなっていき、僕の身体を包む布が生まれた。
僕は一時的に人間になれた。短い期間だが、進化を遂げた。
僕の頭の中には大量の知識が入ってきた。常識、倫理、論理、導き、思想、こころをインストールした。海月は、ウヅキと読むのかな。ましゅろんは人間さんの世界には似つかわしく感じた。ましゅろんではなく、ウヅキという偽名に。
「わぁ~!人間さんだぁ!!」
最初に目にしたのは砂浜へ遊びに来ている男女だ。共に海の家で売っているドリンクを飲んでいる様子だ。次に見かけたのは、小さな子供とその親だ。保護者同士、話しているようだ。
僕だって、海に入りたい!と思った。海岸から飛び込もうとすると、若い男性に
「おい!何をやっている!!」
と、怒鳴られた。
そうか、海岸から入っちゃ駄目なんだな。だが、理性を失った僕はそのまま海に飛び込んだ。
「あ、あ”あ”あ”ぁ”ぁ”!」
その男性は僕の手を掴んだが離れた。男性の五月蝿い叫び声が耳を劈いた。
当分地上に出ることはないだろう。僕はこころに誓った。もう少し、大人に近づいてからもう一度、この地に降りたとう。