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#前世
shima7a
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第110話 「受け継がれる想い」2027年7月。
福岡大会準決勝。
柳城高校の相手は、春の九州大会でも対戦した強豪・東福岡学園。
甲子園まで、あと二勝。
球場には朝早くから多くの観客が詰めかけていた。
三塁側スタンド。
塁。
史陽。
舞。
黒木。
歴代の柳城高校野球部OBたちも応援席に並んでいた。
舞がグラウンドを見つめながら言う。
「先生、少し緊張してるみたい。」
塁はベンチへ目を向ける。
福間監督は、いつもと変わらず腕を組み、静かにグラウンドを見つめていた。
その隣には啓介部長。
「先生は緊張してる時ほど、表情が変わらないんだ。」
塁は懐かしそうに笑った。
試合開始。
序盤は投手戦。
両校とも譲らない。
五回終了。
0対0。
六回表。
柳城高校。
一死一・二塁。
四番打者。
初球。
送りバントではない。
強攻。
鋭い打球は左中間を破る。
二者が生還。
2対0。
柳城高校が先制した。
スタンドが大きく沸く。
しかし。
八回裏。
東福岡学園も反撃。
一死満塁。
一点差。
なおも一死一・三塁。
球場の空気が張り詰める。
福間監督はタイムを要求した。
伝令へ一言だけ伝える。
「山本に。」
「いつもどおりでいい。」
伝令の選手はマウンドへ走る。
山本は伝言を聞くと、小さく頷いた。
再開。
初球。
内角へのストレート。
詰まった打球。
ショート正面。
6-4-3。
ダブルプレー。
チェンジ。
柳城ベンチから大きな歓声が上がる。
九回。
最後の打者。
ファーストゴロ。
一塁手がベースを踏む。
ゲームセット。
2対1。
柳城高校。
決勝進出。
甲子園まで、あと一勝。
試合後。
校歌が球場に響く。
応援席では舞が涙をぬぐっていた。
塁も史陽も、大きな拍手を送る。
ベンチ裏。
部員たちは歓声を上げる。
その中で。
福間監督は静かに帽子を脱いだ。
「おめでとうございます。」
啓介が声を掛ける。
福間監督は首を横に振る。
「まだです。」
「あと一勝。」
「その一勝が、一番難しい。」
啓介も深く頷いた。
夕方。
宿舎。
食事を終えた部員たちが部屋へ戻る。
福間監督は一人、ロビーの窓から夜空を眺めていた。
そこへ啓介がやって来る。
「先生。」
「はい。」
「明日で最後ですね。」
福間監督はゆっくり頷く。
「最後ではありません。」
「明日も、一試合です。」
「いつもと同じです。」
啓介は笑った。
「先生らしいですね。」
福間監督も少しだけ笑う。
「啓介。」
「はい。」
「明日は。」
「選手たちを信じましょう。」
「はい。」
二人は夜空を見上げた。
福間監督最後の夏。
甲子園まで。
あと一勝。
第110話 終
コメント
1件
第110話、お疲れ様です!試合展開が緊迫してて、特に六回の先制と八回のピンチからのダブルプレーは手に汗握りました。伝令の「いつもどおりでいい」って福間監督らしい言葉でじんときましたね。あと一勝、最後まで全力で戦う姿を見守りたいです!