💛💙＼🎂🐣／

💙いらっしゃいませー。……って、あ、照くんじゃん。

カウンターの向こうから顔を出したのは、オーナーの翔太だった。

💛ご贔屓ありがとうございます。今日はどうしました？

つなぎ姿で工具箱を抱え、前髪は少し汗に張りついて、首筋にはうっすらと筋。――いかにも、“体を使う仕事”って感じ。

2人の出会いは少し前。

サウナ好きが高じて自分好みのサウナ屋をオープンした翔太だったが、電気系統にはめっぽう弱かった。

高温を売りにする翔太のサウナは、電気系統が頻繁にやられてしまう。わかってはいても譲れないポイントだった。

そこで紹介されたのが個人でやってる電気業者の岩本。

💛岩本です。電気設備、見させてもらいます。

💙わ、はい。渡辺です、オーナーやってます。

言葉より早く、照がヒーター周りにしゃがみ込む。

動作に無駄がなくて、でも丁寧。

配線をたどる目線や指先が、妙に色っぽい。

💛……焦げてるな。湿気でショートしかけてたかも。

💙危ないんですか？

💛放っとくと、そうだね。最悪、火も出る。

そう言いながら、照はライトを咥えた。

照らされた横顔に、翔太の鼓動が少しだけ速くなる。

💛……これ、どこの業者が施工したか分かる？

💙いやー、どこだったかな？正直、機械は得意じゃなくて、ははっ。

💛そういう人、多いよ。

照は笑って、手の油をタオルで拭った。

その笑顔が、思ったより優しくて、翔太はつい見とれる。

💛とりあえず仮直ししたから、今日からは使える。でも、もうちょいちゃんとやり直した方がいいよ。

💙ありがとう。じゃあまた頼んでもいい？

翔太がそう言うと、照は少し目を細めた。

💛……じゃあ、来週また来てもいいですか？部品持ってきます。

💙あ、はい。お願いします。……あー、岩本さん、サウナ好きですか？

💛ん、好き。仕事終わったらよく行きます。

目尻が下がって、くしゃくしゃな笑顔で「好き。」って言った彼に見とれてしまって、一瞬声が出なかった。

💙あ、じ、じゃあ、次来るとき、入ってってください。うち、熱の入り方自慢なんで。

サウナに誘ったつもりだった。

あくまでも軽く。

けれど、翔太自身は気づいていない。

それが、どうしようもなく“誘っている”ということに。

その瞬間、照の笑顔がすっと変わった。

笑っていた目が、静かに翔太を捉える。

まるで一瞬で空気が濃くなるように。

💛……その誘い方、ずるいな

声が低い。

サウナの熱とは違う熱が、肌を這う。

翔太は、何が“ずるい”のか分からないまま、

ただ、その視線から目を逸らせなかった。

照の目つきが変わった気がした。

💙え？

💛……来週、同じ時間に来ます。楽しみにしてます。

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💙どう？もう直った？

💛うん、これでまたしばらくは大丈夫だと思う。

照は工具バッグを肩から下ろしながら、視線をサウナの方に向ける。

💙あ、入ってってよ？試運転だと思って！ね？

翔太は笑いながら、照のつなぎの胸元をちらっと見る。

汗で張りついた布越しに、鍛え上げられた胸板が動いた。

💛ありがとう。今日楽しみにしてたの。

また、あの顔。

仕事中の真剣な顔とは打って変わって、目尻を下げたくしゃくしゃの笑顔。

さっきまでは怖いくらいだったのに、急に乙女みたいな。可愛い顔。

💛あ、じゃあ。えーっと。脱いでいい？

💙え、あ！ごめんなさい！どうぞ！

翔太は慌てて後ろを向いて脱衣場から出ていこうとした。

💛あ！オーナー？一緒に入らないんすか？

💙え？/////

💛え？……あのー、電気系統の、説明があります。

💙あぁ！そ、そっか！そうだよね！おっけー！

全身真っ赤になった翔太は、慌ててタオルを持ってきて裸になると、2人で一緒にタオルを巻いてサウナへ向かった。

💛〜なので、〜気をつけてください。

💙おう！またよろしくな！ちゃんと熱くていいぞ！……にしても仕事帰りにサウナって幸せだろ？

💛いや、説明聞いてました？

💙大丈夫だろ。またすぐ来いよ！

💛……やっぱり誘ってます？

💙へ？

ゴクリと唾を飲み、翔太の体を見つめる照。

翔太の頬が一気に赤くなった。

サウナより、早く熱くなる心臓の音。

沈黙。

ただ、蒸気の音と呼吸の重なり。

💙……次の点検っていつ？

💛顔、真っ赤だよ？

💙サウナのせいだから。ほら、うち、高温が売りだし。

💛ほんとに？

照が、少しだけ近づく。

蒸気の中で視線が絡まって、

汗と一緒に息も混ざるようだった。

――壊れていたのは、ヒーターじゃなくて。

点火したのは、きっと今。