その日は治が仕事中。🌸は1人で健診に行って、帰ってくる治を家で待っていた。
ポーチの中には、
今日もらった エコー写真 と “重大情報” が入っている。
「ふふ……驚くだろうなぁ」
その顔は完全にいたずらっ子。
玄関の扉が開くなり、治の声。
「ただいま〜……って、あれ?
今日は病院やったんやろ?大丈夫やったんか?」
心配が一気に溢れたように
治が真っ直ぐ🌸に近づいてくる。
「うん、大丈夫だったよ。
結果、見せたいものもあるし」
「よかった……
ほな、なんか食うもん作るわ。とりあえず飯や」
“バレーより飯”の治は帰宅早々キッチンへ向かうが…
「治、ちょっと先にこれ見てほしいんだよね」
治「ん?……なんや急に」
🌸が差し出したのは封筒。
治がソファに座り、じっと見つめる。
「……性別、書いてんねんな?」
「うん。開けてみて」
「ほな、いくで……」
そっと開く治。
中には紙が1枚。
『男の子』
「っしゃあああ!!
男の子きたぁぁ!!
よっしゃ俺の唐揚げレシピ全部教えたる!!」
思ってた以上のテンションの上がり方。
「🌸、男の子やで!男の子やって!!」
本気で嬉しそうで、
その顔を見るだけでこっちまで幸せになる。
だが、まだ終わりじゃない。
「治。
実は……まだ続きがあるんだよね」
「……ん?
なんで性別に続きがあるねん。
普通ひとつやろ?」
「えーっとね……
エコー写真も、見せるね」
ゆっくり渡すと、
治は何気なく目を通した。
ぱっと見た瞬間――
「……あれ?
なんで写真2枚重なっと……いや違う、え?
これ、なんで2人写ってんの?」
「写ってるんじゃなくて……
いるの」
「………………………は?
いや待ってや。
冗談やんな?え、2人?
“兄弟”って、もうおるやん俺ら!!
増やす気か?!」
完全に混乱。
「いやいやいや……
お腹ん中で既にチーム作っとるやん!!なんで黙っとったん!?」
治の関西弁が強まるのは、本気で動揺してる証拠。
「だって、言ったらすぐテンパるから…
サプライズしよって」
「テンパるわ!!!!
サプライズのレベルちゃうわ!!!」
ソファから立ち上がり、部屋をウロウロ。
「え、2人?ほんまに?
今日、急に決まったとかそんなん?」
「元からいたよ?」
「元から!?
なんで俺に教えてくれへんかったん!!
俺、心の準備が……心の準備がぁぁ……!」
今にも倒れそう。
けれど決定的な“とどめ”を刺す。
「しかもね、
2人とも男の子なんだって」
「…………あかん。
もう無理。
宮ファミリー、男子率高すぎて草」
膝から崩れ落ちる治。
動揺MAXのまま、
治は🌸のお腹にそっと手を当てた。
「……でもな。
俺、男兄弟で良かったって何回も思ってきたんや」
その声はほんまに優しい。
「同じように、うちの子らにも
『兄弟おってよかった』って思えるようにしたる
飯は任せろ。
唐揚げは無限に揚げたるし、
2人まとめて面倒見たる」
そして照れ顔で、ぽつり。
「……せやけどな🌸。
俺のこともちゃんと構ってや。
子ども2人おるからって、俺を後回しにせんといてな」
完全に甘えた。
「もちろんだよ」
治は安心したように笑い――
「……はぁぁぁぁ……
やっぱり腹減ったわ。
衝撃でカロリー全部消えた」
やっぱり、治だった。
⸻
双子発覚から数日。
治はまだちょっとソワソワしてる。
そこへ、家にふらっと侑が遊びに来た。
「よぉサム〜。
なんか“重大発表ある”って🌸ちゃんから聞いたんやけど?」
「……あぁ。まぁ、その、な」
「なんやその歯切れ悪いの。
お前、もしかしてメシ食い過ぎて胃やったん?」
「ちゃうわ!!」
🌸が笑いながらエコー写真を差し出す。
「実はね、治の言葉で発表しようと思って」
「お?性別決まったんか?
ほら治、はよ言いや」
「……………男の子や」
「おおーっ!やったやん!
うちに“ちっこい治”が来るんか!
唐揚げ争奪戦大変やな!」
「そんなんええから……。
えっとな……続きが……」
「続き?
なんや、まさか“俺が名前決めたる”とか言い出す気ちゃうやろな?」
「違うわ!!
……あのな……
…………2人、おるねん」
「……は?」
空気がピタッと止まった。
「に……2人??」
「せや。双子や」
「………………」
侑の口角がぴくぴくし始め――
「……ぷっ…………は、はは……
はぁぁぁぁっっ!?!?」
腹抱えて床に転がる。
「ちょ……待って……
治が……!
“バレーより飯”の治が……!!
双子を育てる!?
ひぃぃぃっ……無理や、笑い死ぬ……!!」
「笑いすぎや!!」
「いや無理無理無理!!
だってお前、飯に集中しすぎて
しょっちゅう俺の話聞いてへんやん!!
子ども2人おったら片方絶対見失うで!!」
「見失わへんわ!お前と一緒にすんなや!」
「治が“飯>育児”やのに!?
しかも2人とも男の子?
宮家、男子増殖計画やん!」
「誰が計画したんや!!」
侑は涙流しながら笑い続ける。
「うわぁ〜〜これは親父に言うん楽しみやわ。
“治が二児のパパになります”って」
「言うな!!絶対言うな!!」
「なんでや、めっちゃ面白いやん!」
「面白がるな!!!」
侑は完全にツボっていて、
笑いながら壁叩いて呼吸困難。
「はぁ……っ……治……
お前、双子の育児……
絶対俺よりテンパるで……絶対やで……」
「うるさいわ。
……でも、頑張る。
俺なりにやったる」
侑は笑いながらも、ちょっとだけ真面目な顔。
「……まぁでも、治が父親になるん、悪ないな。
なんやかんや一番優しいし。
双子でも三つ子でも、できるやろ」
「うるさい。
三つ子は無いわ」
「可能性ゼロちゃうで?」
「黙れ!!!!!」
「ぎゃははははは!!!!!」
結局、侑は30分以上笑い続け、
治は30分以上怒り続けた。
そして最終的に――
「はぁぁ……でも、ほんまおめでとうな。治」
「……ありがとう」
ツッコミすぎて疲れた治の肩を、
侑は兄らしくぽん、と軽く叩いた。
でもその直後、
「子ども2人が同時に“パパ!”って来たら
治、絶対パニクるで。見たいわ〜その顔」
「お前ほんまやめろ!!」
侑、最後まで楽しそうだった。
コメント
1件
生まれて治と侑の子供が一緒に遊んでるの想像したら… やばい妄想が止まらん😋