その日、🌸はひとりで検診へ。北さんはいつも通り、仕事から帰宅。
靴を揃え、上着を丁寧に掛け、
「ただいまやで」
と生活音まで規則正しく“北信介の帰宅”が始まる。
リビングに入った北が、🌸のにやけ顔を見て眉を上げた。
「……なんや、その“なんかあります”顔は」
「しんちゃん、今日ね。性別わかったよ」
「ほう。で、どっちなん?」
声はいつも通り落ち着いてる。
でも目だけは“情報を待つモード”で真剣そのもの。
🌸はゆっくり息を吸って言った。
「……女の子だった」
そこで。
ミスター完璧・北信介、持っていたチラシを素で落とす。
「…………お、女?」
「そうだよ、女の子」
「ほんまに……?」
「うん。間違いないって」
北はソファへ座り、両手で頭を抱えた。
「……俺が……女の子の父親……?」
「しんちゃん、そこまで重く考えなくても」
「いや重いわ。
女の子ってあれやろ? 髪の毛可愛くしたり、服も細かいの選ばんとあかんやろ?」
「まぁ、そういうこともあるかな」
「俺、米しか作ることできへんねんけど……?」
真顔で焦り出す北。
「大丈夫だよ、練習すればできるよ」
「練習するのはええけど……女の子って父親のことよぉ見てる言うやん……?」
「そういう話は聞くね」
北は急に背筋を伸ばし、妙に真剣な顔で天井を見た。
「……今まで丁寧に生きといてよかった……
部屋散らかしたりサボったりしとったら、終わっとった……」
人生の振り返り、始まる。
「しんちゃん、そんな緊張しなくても」
「いやするやろ。
俺、怒ったら圧あるって言われるんやぞ? 女の子泣かせたらどうすんねん……」
いつも無表情な男が急に心配性になるレア展開。
「泣いたら優しくフォローすればいいよ」
「優しくって……なんのや……?
俺の優しさって“服揃えといたで”系やで……?」
方向性が完全にビジネス。
🌸がクスクス笑うと、北は深呼吸し、ようやく表情をゆるめた。
「……まぁ、なんとかなるか。
男の子でも女の子でも、丁寧に育てたらええだけやな」
「そうそう」
北は少し照れたように視線を外し、小声で言った。
「……正直言うと、めっちゃ嬉しいで。
頭の処理が追いついてへんだけや」
その直後。
普段絶対やらない“うっかり”で、コーヒーをテーブルに少しこぼす。
「し、しんちゃん!?こぼれてる!」
「……女の子って聞いた衝撃や。
機械って言われる俺でも、バグる時はバグるんやで……」
コメント
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かわいいッ可愛すぎる!北さん!