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「俺は、もう1人で大丈夫だから…」
渡辺に呼び出されて、この場に来た岩本は開口一番こう言われた…
「えっと…いきなり、何?」
突然の事に、理解が追い付かずに聞き返す
「照、俺の事気遣って…今まで一緒に居てくれてただろ?でも、もう俺は大丈夫だから…」
最初、翔太に近付いたのは…
落ち込んでいた渡辺を元気づけてやりたいと思ったから、それは紛れもない事実…
でも、それだけの理由で一緒に居る訳では無くなってしまった今の岩本にとって
【もう1人で大丈夫…】
渡辺の一言が、胸の中で重く滲みた…
「もう2度と、誰の重荷にもなりたく無いんだ…」
ポツリと呟いた渡辺の表情は…何処か辛そう
「照と沢山過ごす様になって、今はまた前向きに色々考えられる様になったんだ…だから、凄く感謝してる」
そう言って笑う渡辺の顔は、笑顔なのに…何処か寂しそうに見えてしまうのは
自分が、そう願っているからなのだろうか…
岩本は、その表情に一縷の望みを賭けて…己の気持ちを口にする
「…俺は…俺は、大丈夫じゃ無いから」
「えっ…?」
聞こえた言葉の意味が理解出来ずに、渡辺が聞き返す
「だから…俺はまだ、この関係を続けたいと思ってるの!翔太の側で話したり…一緒に出掛けて笑い合ったり…本当は、最も先の事だって……っ!」
そこまで言って我に返る…
感情的になり過ぎて、言わなくて良い事まで言ってしまった
「もっと、先の事って…」
「それは…あの…」
口籠る岩本…
そのまましばらくの沈黙が続く…
『俺の気持ちを、ここで伝えて良いものなのか…?』
もっと適した場所があるのでは無いかと一瞬怯むが…
せっかく親密になった渡辺が、このままでは離れて行ってしまう
「………」
長い沈黙の後、岩本が真っ直ぐに渡辺を見つめ
「俺と、付き合ってくれませんか?」
ハッキリと一言、そう告げた
「付き…合う…?」
突然の告白に、当然渡辺は驚いていて
開き直った岩本が、畳み掛ける様に言葉を紡ぐ…
「一緒に過ごしている間、俺は凄く幸せで楽しかった。もっとずっと一緒に居たいと思ったし…もっと、翔太に触れたくなった…この気持ちを抱えたままで、離れるなんて絶対嫌だ!」
思いの丈を一息にぶつけ、息を吸うために言葉を止める…
すると、今まで黙ったままだった渡辺が
「おれも…俺も照と一緒に居たい…」
泣きそうな顔で、素直な気持ちを伝えてくれた
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