コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ただいま〜」
母の声が部屋にこだました。
「絶対喋ったらダメだよ」
「分かってるって!!!!!!」
無駄に強く言ってきたが、今はそれどころじゃない。
母から言葉が漏れる
「いおり!!お家にまた家に友達連れ込んだの!!」
「あ、ごめんひなた、バレちゃったわ」
「何してんだよ〜!!!」
親にも友達にも責められる私だった。
「ほらいおり!!!来なさい!!!」
2階まで響く母の声はバイクのエンジンよりうるさかった。
「へいへ〜い」
母の怒りは積もっていく。
トントン……
「なんですか〜」
「なんですか〜じゃないわよ!!!いい加減にしなさい!!!前も言ったでしょ!?!?家に連れてくるじゃないって!!!何度言ったら理解するのこの馬鹿野郎!!!!!!」
母は溶岩のように口から言葉を吐いた。
(あ〜うるせぇ〜)
その時ひなたと目が合った。
その瞬間、ひなたがこっちに来て
「いおりのお母さん、ごめんなさい。私が勝手に入り込んでしまいました。」
母の顔は曇った表情に変わった。
「……そう。次そんなことはしないで頂戴。」
「はい…すみませんでした。気をつけます。」
(ひなた…マジか……)
───────────────────
私は母にも、ひなたにも申し訳ないと思った。
流石に罪悪感で潰されそうになったから2人に謝った。
「母さん、ごめん。次、私も気をつける。」
母はイラつきながらも「次は本当にないわ。」と許してくれた。
ひなたにも「ひなたごめんね。元は私が悪いのに。なんか奢るね。本当にごめん。」と謝った。
ひなたは本当に優しい奴だ。
「いいよ!!!実際ダメって言われてたのに入った自分も悪いから気にしないで〜」
「…ただ」
「ただ???」
「奢っては、欲しいかなぁ〜w」
「んがッ…てめ……でも、そうだね……!!!!!!ん、でもッ!!!!!!」
私はもう所持金がゼロに近い。あの時奢るって言ったのは適当だったから、そんなことも考えていなかった。
「いや〜 “今” 食べに行きたいな〜」
所持金が無いことをとっくに気づかれていた。
やっぱ、言葉は痛い。
(いやーこれはまずいなぁ……)
頭でどうにかならないか、とぐるぐる回していたらあの時とは違う、優しい声が聞こえた。
「今日はもうご飯を食べて行きなさい。時間も遅いし、金曜日なんだったら泊まってく???」
母はこういうところで無駄に優しい。なぜ私にはこんな当たりが強いのやら…。優しい。もちろん優しいが。
「ええっ!?!?良いんですか!?!?そんな……迷惑じゃ」
ひなたは今まで見たことないような顔をした。
「なら……お言葉に甘えて。この事は母親に伝えておきます!!!本当にありがとうございます!!!!!!」
ひなたの声が明るく響く。母も優しく微笑んで応えた。
さっきいおり言ってたじゃん!!wって小声で言われる。
顔が急に変わって
「ふっ…命拾いしたな、いおり。」
ドキッッッ…………言われた。
「次は奢ってくれよな」
ひなたの目がこちらを窺う。とてつもない恐怖を感じた。あまりに怖くて寒くなった。
(え、ひなたってこんなに怖かったっけ)
ちょっとした不安がいおりに降りかかる。
「ひなた、成長したんだな〜」