即死のようだ。私の恐怖で圧迫された頭に正当防衛という言葉が浮かんだ。
「大丈夫だ。多分、正当防衛ってことになる……。呉林に会いに行こう……」
…………
呉林の家は思いの外近くにあるようだ。私の家の四軒隣だ。
それはほとんど緑色の家で、どこにでもありそうな家だった。
ピンポーンと鳴らす。
「赤羽さん。怪我は大丈夫? あ、恵ちゃんに手当してもらったのね。今、旅行から帰ったお姉さんと今後のことを話していたの」
いつもの?呉林に出会って、私と安浦は安心した。
「呉林。あの……ゴルフ場は酷かったな……」
「ええ……私も死ぬかと思ったわ。それより、ありがとう。みんな助かったのはあなたのお陰よ」
呉林はにっこりした。
「俺は……死にたくなかっただけだ。ボロアパートに帰りたい。そう思って」
「そんなことはないわ。自分のことをただ知らないだけ、現にみんな生きているじゃない」
呉林は私の肩にそっと手を置いた。
「中に入って」
「ありがとう……」
呉林の家に上がると、旅行から帰った呉林の姉は、やはり美人だった。茶色い髪は腰までゆったりとしていて、切れ長の目は紫のアイシャドウで彩られている。スラリとしているが、なかなかに立派なバストをしていた。年は私より上のようだ。恐らくは20代後半。和服が似会いそうな美人だった。
「あなたが赤羽さんね。私は霧画(きりえ)初めまして」
挨拶を手短にして、居間に通されると、立ったままで対応する。
「初めまして、お疲れのところどうもすいません。お邪魔します」
「あ、座って下さい。真理。お茶を」
あの呉林が、お茶を作りに立ち上がるなんて、私はかなりびっくりした。
居間は和室になっていて、床の間には高価そうな壺がぽつんと置いてある。4人が中央の龍がところどころ掘られた木製のテーブルを囲めるように、それぞれ正座をするかたちになった。
呉林はお茶を人数分持ってくると、
「姉さん。あの赤レンガの喫茶店の店主と知り合いだったのよね。そのことを二人に話して頂戴」
私は驚いた。
「ええ。私の昔の依頼人なの」
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