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翌日、朝早くから準備を始める。
会場に向かうための準備である。
朝食を取り、荷物をまとめてから宿屋を出るリオンたち。
今日に限っては、アリスも一緒だ。
「あれ?エリシアは?」
「先に行ったみたいですね」
リオンの疑問に対し、アリスが答えた。
早くいかないといい席が取れなくなる、と言っていたらしい。
昨日まではロゼッタの見舞いに行っていたのだが、彼女の容体もずいぶんと良くなってきた。
『本戦くらいは私の代わりに応援してきてほしい』
彼女からそう言われたからだ。
ロゼッタのためにも、必ず優勝しようと心に決める一行。
その表情からは確かな決意を感じる。
「よし!行こう!」
「うん!」
「行きましょう!」
三人の声が重なる。
そして、ついに決戦の舞台へと足を踏み入れる。
会場は大きな歓声に包まれていた。
観客席には多くの観客たちが座っており、皆が期待に満ちた眼差しで見つめている。
そんな中、舞台の上に一人の男が姿を現す。
「大変長らくお待たせいたしました!これより本戦を開催いたします!!」
司会者の言葉により、一層大きな盛り上がりを見せる。
「それでは、選手の紹介に移りたいと思います」
そして、順番に選手たちが紹介されてゆく。
予選を勝ち残った十六人の戦士たち。
リオン、シルヴィ…
ガ―レット、キョウナ、ルイサ、バッシュ…
スリュー、ケルカ…
その他合わせて総勢十六人の参加者が舞台に立つ。
それぞれ強者揃いだ。
特に注目なのはやはり…
「まずは優勝候補筆頭のこの男!」
そう言って紹介されたのは、大柄の男だった。
身長は二メートル近くあり、筋骨隆々といった風貌をしている。
明らかに他の者たちとは格が違うようだ。
彼はニヤリと笑う。
「俺の名はゴルド!この大会の優勝は、この俺がいただいたぜぇ!!」
自信満々と言わんばかりに宣言する。
しかし、それに対して反論する者が現れる。
「ハッハァッ!!面白いことを言うじゃねぇか!」
そう言い放ったのはガ―レットだった。
「俺の方が強いさ」
「ほぅ…それは楽しみだなぁ!」
二人の視線が交差する。
バチバチと火花が散る。
だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
すぐに気持ちを切り替える。
そしてそれぞれの選手の紹介がされた。
内容は無難かつ分かりやすい内容だった。
「続いては、今大会のダークホース!」
次に呼ばれたのはシルヴィだ。
「シルヴィさんです!」
すると、シルヴィは笑顔を浮かべながら手を振った。
観客席にいるリリアに向けて。
エリシアが、リリアに『シルヴィとリオンが出場する』と伝えたらしい。
無理をしてでも来る、とのことだ。
シルヴィのその姿を見たのか、どこか嬉しそうな様子で手を振り返すリリア。
「シルヴィ!頑張れ~!」
「はい、精一杯頑張ってきます!」
シルヴィの返事に満足したようで、さらに大きく手を振る。
それからも選手紹介は続き、それも終わった。
そしていよいよ本選が開始される。
一戦目はリオン陣営でもガ―レット陣営でもない一般の参加者だ。
彼らは二人とも木刀士であり、実力は拮抗していた。
お互いに一歩も譲らず、勝負はなかなか決まらない。
だが、最後は一瞬の出来事だった。
相手の木刀を弾き飛ばしたかと思うと、そのまま首元に切っ先を突きつける。
「ま、参りました…」
「うむ、良い戦いだったぞ!」
こうして初戦はあっという間に決着した。
その後も順調に試合が進む。
そしてついにシルヴィの試合が始まるのだ。
シルヴィは大きく深呼吸をする。
心臓の鼓動が速くなり、緊張が高まる。
相手は細身の体型の女性だ。
顔立ちは非常に整っているものの、その表情からはあまり感情を読み取ることができない。
シルヴィもまた表情を変えずにじっと見据える。
二人は互いに向かい合う。
そして審判による合図が出された。
「始め!」
その声と同時にシルヴィが動く。
素早い動きで相手に接近する。
対する相手は微塵も動揺を見せない。
落ち着いた動作で構えを取る。
そして…
二人の攻撃が交錯する。
お互いの攻撃がぶつかり合い、激しい衝撃が巻き起こる。
「ぐぅううう!!!」
「うううぅぅぅ!」
シルヴィは苦悶の声を上げる。
どうやら互角のようだ。
そこからは両者ともに一歩も引かない攻防が続く。
互いの攻撃を防ぎつつ、隙を見て反撃を行う。
まさに両者共に譲らない展開となった。
しばらくすると、女の動きに変化が訪れる。
徐々にではあるが、速度が落ちてきた。
一方のシルヴィはまだまだ余裕がありそうだ。
「はあああ!」
気合の入った掛け声と共に、渾身の力で殴りかかる。
それをまともに喰らい、吹っ飛ぶ女。
決着はついた。
この勝負はシルヴィの勝ちだ。
「やったね!シルヴィ!」
観客席からリリアの声援が届く。
シルヴィはそれに応えるように小さくガッツポーズをした。
さらに別の参加者の試合が続いていく。
やがてリオンの番になった。
観客たちの歓声が上がる。
だが、リオンは冷静に状況を分析する。
相手がどんな奴なのか、見極めてから、そう考え、まずは相手の出方を見ることにした。
すると、対戦相手の男は不敵な笑みを浮かべた。
「へぇ…お前が噂のリオンか」
「俺のことを知っていたのか?」
「もちろんだとも」
男はニヤリと笑う。
自信満々に言い放つ男に対し、リオンは興味津々といった様子だ。
「ならば見せてもらおうか。お前の実力を!」
「ああ!」
そして戦いが始まった。
両者は睨みあいながら、じりじりと距離を詰めていく。
そして次の瞬間…
「はぁ!」
先に仕掛けたのは男のほうだった。
勢いよく駆け出し、一気に間合いをつめる。
そしてそのまま木刀を振り下ろす。
だが、それはフェイントだった。
木刀を途中で止め、拳を放つ。
「くらえ!」
だが、それは予測されていたようだ。
拳を片手で受け止めるリオン。
「なに!?」
「今度はこっちの番だ!」
そう言うと同時に、もう片方の手で強烈な一撃を与える。
「ぐふぅ!!」
リオンの拳をモロに直撃を受け、男が吹き飛ばされる。
しかし、それでもなお立ち上がる。
「まだ終わりじゃないぞ!」
次々と攻撃を繰り出すリオン。
それに対して男は必死に抵抗する。
単純な力だけならば相手の方が上か。
そう考えるリオン。
そこで戦法を変えることにした。
相手の攻撃を受け流し、カウンターを仕掛ける。
それにより相手は徐々に追い詰められていった。
そして、ついに決着がついた。
「そこまで!」
審判による判定が下される。
「勝者!リオン選手!」
「よし!」
見事勝利を収めたことで、会場から大きな拍手が巻き起こった。
こうして一回戦は無事に突破することができた。
リオン、シルヴィ共に。
先ほどガ―レットと言い争っていた男、ゴルドも残っている。
「あと残っているのは…」
対戦表を確認するリオン。
ガ―レットとルイサも残っている。
一方で、キョウナは一回戦で負けていた。
これは意外だった。
「なんだ、あのキョウナというやつ負けたのか」
シルヴィの言葉に、軽く頷くリオン。
あとは、以前酒場にガ―レットと共に来ていた少女。
バッシュも残っている。
そして次のリオンの相手は…
「ルイサ…」
「リオン、キミの妹だよね?」
「ああ…」
シルヴィの指摘を受け、リオンは拳を握り締める。
正直、不安しかなかった。
殺されかけたとはいえ、実の妹なのだ。
だが、逃げるわけにはいかない。
自分のために、仲間たちのためにも。
傷つけられたロゼッタのためにも…
必ず勝ってみせる。
そう決意するリオンだった。