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城プル
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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FORSAKENのフィールド巡回から戻った神殿の回廊。
その重苦しい空気の中に、一瞬で破滅的な甘い香りが充満した。
黒い毛並みを揺らし、白い服の襟ぐりを大雑把に寛げたウェアウルフが、ドカドカと重い足音を立てて歩いてくる。
右目の黒い眼帯を指先で少し直しながら、左の鋭い赤目を気だるげに細めていた。
「チッ……気味の悪い場所に出くわしたぜ。」
「妙な蔓草が群生してて、払っても払っても体にまとわりつきやがる……」
ウルフ本人は、それが何であるかをまったく理解していなかった。
だが、その背後から優雅に歩み寄ろうとしていた黒ハチワレ猫頭の紳士、Mowlにとっては、それが全宇宙の崩壊に等しい壊滅的な事態であった。
「……ッ!?」
Mowlが踏み出した足が、ピタリと固まる。
胸の黄色いリボンを整えようとした前脚が、空中で震えた。
ウルフの身体から漂ってくるのは、ただの野草の匂いではない。
人間の世界でいえば、極上の媚薬にして最凶の麻薬——強烈な生の「マタタビ」の芳香であった。
「ウ……ウルフ殿……っ! 貴方様、一体どこを……巡回して来られたのですか……っ!?」
Mowlは愛用のモノクルを指先で必死に押し押さえ、後ずさりしようとした。
紳士としてのプライドが、脳内の警報をカンカンと鳴らし続けている。
(離れなければ……! 速やかにこの場を離脱し、自室に籠城しなければ……私めの理性が……っ!)
「あ? フィールドの北側の湿地帯だが……おい、どうしたMowl。変な顔しやがって」
ウルフが何気なく一歩、歩み寄る。
ふわっ。
その瞬間に風が巻き起こり、ウルフの黒マントと黒い毛並みの奥に溜まっていた濃密なマタタビの香気が、ダイレクトにMowlの鼻腔を撃ち抜いた。
「〜ぐに゛ゃあっ!?」
Mowlの思考回路が、一瞬で真っ白に焼き切れた。
知的で冷静だった黒ハチワレの瞳孔が、「カッ!!」と極限まで見開かれ、完全に真っ黒なビー玉状態と化す。
猫耳は後ろへピタリと倒れ、身体から紳士的な緊張感が霧散した。
「……おい、Mowl?」
「……あ……うにゃ……」
理性の堤防が崩壊した。
Mowlは吸い寄せられるようにフラフラとウルフの元へ歩み寄った。
「……っ、ウルフ様……っ♡」
「は? 『様』……なっ!?」
ドシンッ!
Mowlはウルフの胸元——あの少し汚れた白い服の真っ直ぐ真ん中へと、顔面から飛び込んだ。
そのまま、自身の黒ハチワレの頭部を、ウルフの胸板へ擦り付け始めたのだ。
スリッ……スリッ……
スリリリリッ……♡
「お、おいっ!? 急に何しやがる猫野郎……ッ!?」
「あぁぁ……っ! 良い匂い……♡」
「至高の香りにございます……っ! 」
「ウルフ様……私めの……私めのウルフ様……っ! 」
「にゃあぁっ……♡」
Mowlは普段の重厚な低音ボイスをどこへ捨て去ったのか。
聞いたこともないほどとろけた甘い声を漏らしながら、なりふり構わずウルフにしがみついた。
猫にとってマタタビの香りは、脳内の多幸感を強制加熱させる危険な物質。
ましてや、その香りをまとっているのが、日頃から自分を乱暴に、だが執着を持って愛撫してくる大好きな「オス獣」なのだ。
本能が抑えきれるはずもなかった。
「ん〜っ♡ぺろぺろ……ッ♡ 」
Mowlはウルフの白い服に頬を擦り付け、唾液がつくのも構わずにペロペロと舐め上げる。
スリスリ……ッ!
さらには服の隙間から覗くウルフの首元の黒い毛並みへと顔をうずめた。
「離れるなど……到底……不可能にございます……にゃぁっ……♡」
ウルフの首筋、胸元、肩口。
自分のフェロモンと体臭を擦り付け、ウルフのマタタビの香りを身体中に塗りたくるように、Mowlはお尻を振って必死に擦り寄り続ける。
「っ……く……! お前……急に可愛くなりやがって……っ!」
ウルフの左の赤目が、ギラリと猛烈な捕食者の光を帯びた。
自分の胸元で「にゃあ、にゃあ」と情けなく鳴きながら、擦り寄ってくるMowl。
いつもの澄ました「紳士」のツラはどこにもない。
ただウルフの体温と香りに狂わされ、甘えてくる猫がそこにいた。
「おい、Mowl。お前、自分が何してんのか分かってんのか?」
ウルフは太い腕で、胸元で悶絶するMowlの華奢な腰をガシッと抱き抱えた。
「ウルフ様……っ! 」
「もっと……もっと私めを……擦り合わせてください……っ♡ 」
「体が……熱くて……」
「にゃぁぁんっ……♡」
Mowlはモノクルを歪ませたまま、ウルフの黒い毛並みに爪を立て、自らウルフの鼻先へ、首筋へ、無防備な黒ハチワレの顔を擦り付け続ける。
「知らねえぞ……後で『理性を失っていた』なんて言い訳しても、絶対許さねえからな」
ウルフは凶悪に唇を歪めると、マタタビの香りに完全にトランス状態となったMowlを軽々とお姫様抱っこにした。
「にゃあ……♡にゃあ……っ♡」
Mowlはその腕の中で、ウルフの首筋に顔を埋めて擦り寄り続けている。
「よし……お前がその気なら、朝までたっぷり『マタタビ漬け』にしてやる」
「ハッ……っ、感謝……いたします……ウルフ様ぁっ……♡」
「にゃんっ……!」
ゴロゴロゴロ……♡
完全に理性を溶かされたMowlは、ウルフの胸の中で喉を鳴らしながら、自ら狼のベッドへと運ばれていくのだった。
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