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世界凍った。
前にテレビでこの寒さは未曾有だと語っていた。
そして、道路も、空も、大陸も、海も森も建物も山も。全て青く、白く。そして酷く冷たく凍った。
まだ人がいた頃のことを思い出す。外のあまりの静けさに思わず息を吸った人が。
…肺から凍って、数十秒で全身に冷えが回って凍った後、間もなくして砕け、さっきまで動いていた人がそこら辺の氷粒に豹変した。
そんな人を直に目撃してしまい 私達は安全圏、即ち家の中で白くて浅く、そして酷く鋭い呼吸を繰り返した。
ひぽ、ひぽ、せー、ぜ。と…
何故思い出してしまったのだろうか。私、琴葉茜は涙が地に落ちそうになった。
そんなに私を見て妹、琴葉葵が大丈夫?と声をかけてくれた。
ああ、世界全てが凍っても、世界がいくら氷点下のままでも、妹の心は暖かいままなんだと実感した。
ふと時計を見ると、夕飯の時間に近かった。
今日は何時もより少し寒かった気がした為、コンポタにすることにした。
しかし、コンポタが今から作る分を抜いて残り2回分しかないことに気がついた。
少し苦しいか、と落胆しながらコンポタを作ることにした。
コンポタを作るために鍋をあっためている最中、窓の隙間から寒が抜けていった。
ふと、何故か記憶が蘇った。
私たちはいつか日本一のVOICEROIDになる。だっけなあ。懐かしい。
なんでこんなこと思い出したんだろう。もう夢は叶えられないしいつか思い出も夢も私たち含めて全部凍るのに。
コンポタができた。だから妹と食べるために妹の分をこたつのあるテーブルに呼ぶ。
すぐ来た。だから一緒に頂く。
やっぱり寒い日のコンポタは最高だ。そう感じるほどのクリーミーな味が口いっぱいに広がった。
ふと、妹が食事中に歌を歌い始めた。
マナーがなってないよ、と注意しようとしたが、こんな終末の世界、ましてや私たち以外人は居ない。その上、ぐるぐるとした夜。
こんな世界にマナーもへったくれもないか。と思ったので歌に乗る。2人で歌うとやっぱ最強だな。と思った。
けど、歌が最後まで終わったあと、そこにあるのは虚無だけだった。さっきの声は夜に消えてしまったのだろうか。そう思えるほどの静けさと虚無だけがコンポタの中に残っていた。
食後は、決まってこたつに入りながら籠に入ったみかんを食べる。
食べながら、この世界の事を妹と語り合う。
そして次の季節が来ないという事実に辿り着く。今日もそこにたどり着いてしまった。
この生活がいつまで続けられるんだろうね。
自分で言ったにも関わらず悲しくなり涙腺が緩む。妹も思っていたのか、涙目になっていた。そんな妹の姿がいたたまれなくなり、涙腺が決壊し泣いてしまった。
妹も釣られたのか泣いていた。
涙が収まりそうになった時、ふと妹が
「冷気の蔓延でさ、細胞単位の終わりを迎えたら、星が堕ちる現象。」
って話した。
私は続けて、こう放った。
「クーネル・エンゲイザー…?」と
妹は何も言わぬまま、ゆっくり頷いた。
そのあと、何故か少しばかり気まずくなり
2人で何も映らなくなって黒いままのテレビを見つめていた。
ああ、夜はまだ長いな。