テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「どこ? どうする? って、ええとぉっ、えっとぉえっとぉ…… そ、そうだっ! ほらそこの穴ぐらの中に隠れるんだよ、穴の一番奥まで行ってぇ、んで、んでぇ…… そ、そうだぁっ! 魔力を循環させて石化、ううん、ギレスラは邪竜化、ペトラは爆発を防ぐんだよっ! グルグルグルグル、ふっふっふっふっってねぇっ! さあ、さあぁっ! 急いで入った入ったぁっ!」
『ワカッタ! オクマデイッテグルグルフッフッ、ダナ! リョーカイッ!』
素直に行動に移したギレスラと違い、ペトラは冷静な表情を浮かべてレイブに対して更なる言葉を返す。
『確かに穴ぐらの奥は深い鍾乳洞っぽくなっているけど…… レイブお兄ちゃんは入れないじゃない! お兄ちゃんはどうするのよ? どこに逃げるって言うのぉ?』
ペトラの言葉にやや冷静さを取り戻した感じでレイブは答える。
「う、うん? 僕ぅ? 僕かぁ…… うんっ! 僕は前から言っていた通り、通路に寝転がって身を隠すから大丈夫、心配要らないよぉ! それよりペトラ、ギレスラと一緒に隠れていてね! ほらほらぁ、早く、早くぅ!」
『う、うん……』
半ば強引にギレスラの後を追わせる様にペトラを穴ぐらに押し込めたレイブは、先程の言葉を自ら裏切って穴ぐらの通路を護る様に立ち塞がったのである。
「グルグルグルグル、ふっ! ふっ! ふっ! ふっ! ふっぅ!」
大切な弟と妹の気配が、自らは入った事が無い穴ぐらの更に奥へと消え去った事を察したレイブは、激しく呼吸を繰り返して襲い来る魔力の全てを相殺する為の息吹を整えたのである。
――――せめて、ギレスラとペトラ、二人だけは守るっ! ここで終わるとしてもっ! 絶対にっ!
仁王立ちのレイブの耳にひたひたとした足音が聞こえる。
――――足音? こんな濃厚な魔力の中を一体誰がぁ? チョット見てみようかな?
思うと同時に倉庫の入り口に歩み寄り、顔を覗かせたレイブの目にはハッキリとした、『不自然』が映ったのである。
岩窟の入り口には後ろから射し込む陽光を変じさせた濃密な魔力に依る真っ青な光が溢れていた。
その青光の中心に、有り得ない存在、黒々とした人影がユラリと佇んでいたのである。
ヒタ、ヒタ、ヒタリ。
一歩一歩、ゆっくりと歩を進めた黒い人影は一瞬だけ立ち止まると大きな声で吠えたのである。
ボヒョゥーッ! ガウァガァーッ!
声と言うより、開いた口から漏れ出した魔力が周囲の空気を震わせた音と、岩窟に含まれる堅い鉱物の組成自体が、まるで恐怖を感じたかの様に強制的に振動を繰り返し答えさせられただけの、言わば物理音が響き渡るのであった。
山体の一部として強固に組み込まれている岩窟が、こんな風に単独で悲鳴を漏らす事など有りはしない、その一事を以(も)ってこれが異常事態だ、その事が幼いレイブにも手に取るように、いいや、本能の警鐘として届けられ、結果、即座に行動に移させるのであった。
青い光に包まれた漆黒の襲撃者から目を背けた次の瞬間、レイブは躊躇の欠片(かけら)を見せる事もなく、穴ぐらの奥に繋がる狭い通路にその身を投げ出したのである。