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成瀬りん
30
#恋愛
ばたっちゅ
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探索2日目の朝、小鬼の洞穴2階層の階段付近。
色々とオーバースペックな『ニルルクの究極天幕』の中でスッキリ目覚めた俺とテオは、出発の準備を終えた。
「じゃあ行くか――」
「待って!」
俺がテントの入口を開けようとしたところ、テオが呼び止めた。
「なんだよ?」
「このテントは【防音加工LV5★】の効果で、外からは中の音が聞こえないし、逆に中からは外の音が聞こえなくなってる。だからこそ安心して安眠できるわけだけど……デメリットってやつもあるんだよね」
言いにくそうに説明するテオ。
「デメリット?」
意味が分からず聞き返す。
魔物だらけのダンジョンの中で確実に安全に眠れる。
理想通りの夢アイテムとしか思えないのに……いったい何が問題なんだ?
テオは「ふぅっ」と一息ついてから喋り出す。
「昨日、周辺の魔物を殲滅しただろ? たぶん時間的に、そろそろ復活しつつある頃だと思うんだ」
「そういえば、復活するまで1晩ぐらいって言ってたな」
「うん。じゃあもし……復活した魔物がたまたまテント入口の死角に居たとして、タクトがそれに気付かず外に出ちゃったら?」
「……」
快適&安全空間で過ごすうち、俺はすっかり忘れていた。
ここが危険地帯のど真ん中だということを。
ようやく気付いた俺は、入口へ伸ばしかけていた手を引っ込めた。
「そういう訳で気を付けてね、ってだけなんだけど……」
ここで少し考えるような動作をしたテオが、笑顔に戻った。
「うん! 今は近くに魔物はいないっぽいから、そのまま出ちゃっていいよっ」
「え、なんで分かるんだ?」
「【気配察知】スキルを使ったのさ」
「あぁ……」
そういやゲームにもそんなスキルがあった。
称号『器用貧乏』を持つテオなら、これも覚えていたって不思議じゃない。
【気配察知LV1】は、自分中心に半径30m以内の気配を察知できるスキルだ。
スキルLVが上がるごとに、察知できる範囲が広がっていく。
ゲームでも、戦闘をある程度こなしさえすれば自然と習得可能。
かつては「強敵出現エリアを除き、敵が居ようが居まいが気にせず突っ込んで蹴散らしていく」プレイスタイルで遊んでいた俺には無縁だったけど……。
いざ戦いの日々が現実となった今は、早めに欲しいスキルだな。
「なるほど……テオが毎回、俺より先に魔物を見つけるのも【気配察知】を使ってたからなのか――」
「違うよ?」
きょとんとした顔で否定するテオ。
「俺、音に関しては人一倍うるさいんだぜ。なんたって『吟遊詩人』だからなっ」
「??」
理解が追い付かない俺を放置し、テオは喋り続ける。
「だって鳴き声も足音も、魔物によって全然違うし。同じ種類でも、個体によって微妙に出す音が変わるんだ。それさえ聞き分けられれば、何が何体いるか分かるじゃん! ゴブリンなんか分かりやすいよね~、あいつら手に持った武器を振り回しながら歩くからさ、その物音で簡単に装備を割り出せるし。後は音の大きさとかで、何となくの距離を弾き出せばOKだよっ」
まるでいとも簡単な事かのように説明するテオ。
俺は溜息をつきつつも、一応質問してみる。
「それ、俺にもできるかな?」
「んー……練習すれば、できるかも?」
「いや無理だろ」
「……まぁタクトは、【気配察知】を覚えるほうが早くて確実なんじゃない?」
笑いながらも今度こそ真面目に答えるテオに、俺も「だよな」と同意した。
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テントを片付け、階段を下りて3階層へ。
その後も順調に4階層、5階層へと進んで行く。
スキルを覚えやすくなる【技能習得心得LV1】のおかげか。
ひたすら魔物を倒しまくったおかげか。
俺は、3階層の中盤で【気配察知LV1】を習得した。
習得後は、常時【気配察知】を展開しながら移動してみる。
少し手間取ったが、5階層では多少雑談しながら探索できるまでになった。
余裕がでてきた俺が、歩きながらボソッと言う。
「やっぱり……近くに魔物がいるかどうか分かるだけで、全然違うもんだな」
「だねっ。このダンジョンに入ったばかりのタクトったら、ず~っと顔が強張って、全身に変なチカラが入りまくってたし!」
スキル【気配察知】は、いわゆる“お知らせアラート”のようなものだ。
常時発動しておけば、魔物が近づいてきた瞬間、ウィンドウがピコンッと開く。
それを確認してから戦闘態勢を取っても遅くない。
昨日からの確実な成長を感じた俺は、「この調子で頑張ろう」と思うのだった。