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カイガ
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#魔道具職人
こはる
135
それからしばらくお互い黙ってコーヒーを飲んだりデザートを食べたりして過ごし、流れ的に解散することになった。
「ごちになりました。じゃあこれで」
「うん。話が出来て良かった。もし悩みができたら私に相談しに来てほしい。私は三ツ木君の話、きちんと聞いてあげられるから。
それと、以前も言ったけど、学校でしたような傷害・暴行はやらないこと!また署の取り調べ室で会うことがないように」
それと…と菫は姪の紅実のことで釘を刺そうとする。
「今後二度と、紅実をあんな危険な目に遭わせるような事態を引き起こさないで欲しい。君をあの暴動とは無関係であることを確定させる条件として、約束して欲しい」
「………まぁ、あいつとはもう関係無いんで。俺の方から危害を加えることはしませんよ。巻き込まないようにも、します」
「最後に一つ、紅実は三ツ木君の味方になってあげられると思う。あの子は君の事情をある程度知っているようだし、君を否定することもしないと思う。もしあの子が君に手を差し伸べることがあれば、その時はどうか拒否しないでやって欲しい」
二人は店の外でそんな言葉を交わしてから別れた。シュートは花宮菫が自分にとって無害な人間であることを確定させた。ああいう人間が世の中を占めてくれたらなぁと悩ましげにため息をつく。
「悪いけど、暴力は止めないよ。世の中のクズ人間どもが俺を害そうとし続ける限りは」
菫との話の後、シュートはスーパーで夜食の分だけ買って、腹ごなしにまた歩いて家へ帰ることにする。そして最寄り駅へ行く道の途中にあるコンビニの近くまで戻ったところで、妙な集団と遭遇する。
スキンヘッドの人相悪めの男、アウトローな人相と服装の男、トレッドヘアの大男など、どれも柄が悪い見た目の男たちが辺りをジロリと睨み回している。そのせいでコンビニに立ち寄る人間はいつもより少なくなっている。
(……なんか前にも、こんな奴らがいたな…)
そう思いながらシュートが彼らを無視して立ち去ろうとすると、赤いロン毛の男がシュートを見てあっ!と声を上げる。
「なぁ、あいつ……写メの奴とそっくりというか、本人じゃねーか?」
シュートを指差して仲間に呼びかける赤いロン毛男に、仲間たちもシュートと携帯電話に写っている画像とを見比べる。すると何かを確信した様子で揃ってシュートに近づいてくる。あっという間にシュートは柄の悪い男たちに取り囲まれてしまった。
「何か用?早く帰ってのんびりしたいんだけど」
「お兄さんにちょおっと質もーん。このスマホに写ってるのって……お前だよな?」
言葉の後半部分は圧力をかけるように問いかける男に、シュートはだったら何?と答える。すると男たちは揃って険しい顔つきになる。
「やっぱりお前が、俺たちの舎弟どもを潰した野郎だったか。ようやく見つけたぜぇ」
ぼさぼさ髪で顎鬚が目立つ男が嗜虐的な笑みを浮かべてシュートに敵意を向けてくる。周りにいる仲間たちも同じような笑みを浮かべる。これから全員でシュートを叩き潰すことを楽しみにしている様子だ。
「………あーはいはい。要するにまた馬鹿で社会のゴミ集団が、仲間がやられたからって報復に来たわけね。あー下らな。俺はただ、世の中に存在する価値が無い人間のゴミカスどもを掃除しただけだってのに。お前らのそれは下らない逆上だってこと、分からないかなー」
心底見下して馬鹿にした態度でシュートがそう言うと柄の悪い男たち…この地域ではそこそこ規模が大きい半グレグループの面々はさらに苛立ちを募らせる。彼らの年齢層は二十代前半から三十近い者もいる。学生の不良集団よりもさらに質が悪い大人の半グレグループである。
「この、ガキ……たかだが学生の不良を一人や二人喧嘩で勝ったくらいで、俺たち相手に粋がってんじゃねぇぞ…!俺たちはそこらの不良のガキどもとはワケが違うってこと、思い知らせてやる必要があるなぁ」
いかにも短気そうなツーブロックの男が拳を鳴らしながらシュートとの距離を縮めてくる。彼が先にシュートを叩くつもりでいる。
シュートと半グレたちによる争いが起こると察した通行人たちは、彼らがいる通路から遠ざかって行った。誰一人としてそこに近づこうとする者はいなくなる。
そしてコンビニ内からシュートと半グレたちの対立を見ているアルバイトの男性は、もうんざりだと言いたげに青い顔で唸っていた。「何で自分のシフト時間に、喧嘩の場面がカブってくるんだよ……っ」と嘆くのだった。
一方半グレグループのメンバーを一人一人観察したシュートは、面白そうにこう問いただす。
「確かに、今まで出てきた不良連中よりはやりそうに見えるな。というかお前らって、人殺したことあるでしょ?」
シュートの指摘に半グレグループは揃って押し黙る。動揺している者もいる。完全に図星だった。
「何となく分かるんだよね。俺も一回(異世界で)やっちゃってるからさ。よく捕まってねーなお前ら」
「こいつ……っ」「何なんだこのガキ……っ」
半グレたちはシュートを不気味に思いはじめる。しかし人数がいる分、自分たちが強いと思い直して強気な姿勢を戻す。
「調子に乗ってられんのも今のうちだ。お前はもちろん、お前の家族にも痛い目遭ってもらうし、家も荒らしまくってやる!俺らを甘く見るんじゃねぇぞ?これまで何度もサツから逃げ切ってみせたからなぁ。あいつらに泣きついたって無駄だからな!」
半グレの一人がそう言って笑うと仲間たちもそれに同調して下卑た笑い声を上げる。
「は?何俺がお前らに一方的に潰される前提で話進めてんの?しかも俺ん家を荒らすだとか何とかほざきやがって…」
家族…父親と母親にまで痛い目に遭わせるという発言はスルーしたシュートだったが、自分が暮らしている家を荒らすという発言に対して青筋を立てる。
「………社会のゴミで人間のクズでもあるお前らが、俺に対して何舐めた口叩いてんの?馬鹿でクズなくせにさぁ」
苛立たしげに半グレたちを貶める発言をするシュートの険悪な雰囲気に彼らは怯むどころかさらに怒りを買う。スキル「威嚇」を発動していない為、彼らの目に映るシュートは一人でイキがっているガキにしか見えないでいる。
「俺たちが社会のゴミだって?まぁ否定はしねぇよ。俺らは半グレグループで通してるからな。けどダチ…今回は舎弟たちがやられて黙ってられる程、俺らはクズじゃねぇ!」
「ふーんそういう連中ね?お友達を愛する半グレどもってことか。群れないとロクに喧嘩もできないような弱い連中が、語られてもねぇ」
「そのお友達の一人もいなさそうなクソボッチのクソガキに言われたくねぇんだよ!どうせ毎日暗い学生生活送ってんだろ、陰キャのボッチ野郎!なんなら今から電話で誰か呼んでみろよぉ?どうせだぁれも助けにはこねぇだろうけど!」
シュートを煽って貶める発言をして半グレたちは嘲るように笑い声を上げる。
「………決めた。お前ら全員、二度とそうやって外を出歩けなくなるまで壊す」
静かにそう言った直後、シュートは「空間転移術」を発動して、自分と半グレグループ全員を異空間へ移動させた。スキルを何度も使用したことで強化された「空間転移術」は、自分がいる位置から10m以内にいる対象の人と物を複数ワープ出来るようになっている。
突如謎の空間へ転移させられた半グレたちは何が起こってるのかと狼狽えるしかない。そんな彼らにシュートは無言で、無表情のまま近づいていく。顔は無表情であるものの、中身は彼らへの不快感による怒りで沸騰している。
「花宮刑事、すみませーん。早速約束破っちゃいまーす」
自分がこれからするのはただの暴力。しかしその暴力は他の人たちにとって大した害にはならないはずだ。
むしろ社会のゴミである半グレたちが再起不能になることでこの地域の治安が良くなるのだから、深刻な問題にはならないのでは?
自分がこれからすることは間違いなく正義であり、大義は我に在りと…シュートはそうやって自分を正当化するのだった。
コメント
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あおいです🤍 54話、読み終えました。 花宮刑事とのあの約束……あっさり「破っちゃいまーす」って言い放つシュートくんの軽さが逆に怖かったです。異空間に半グレ連中をワープさせるところ、もう完全に止まれない感じがひしひしと伝わってきました。自分を正義だと言い聞かせる彼の心の叫びが切ない……。