シェアハウスに帰り、それぞれ一息ついたところで高地が思い出したように声を上げる。
「そういえばさ、俺らを襲おうとしたあの麻瀬ってやつはどこ行ったんだ?」
「ああ、気づいたら逃げてたよ」
と答えるジェシー。「でも、『ガイル』の証明書は俺が持って帰ったから大丈夫だろ。さっきシュレッダーにかけて捨てちゃったけど」
大我はきょとんとしている。「えっ、みんなも襲われたの?」
「未遂だよ。トパが直前に気づいて、雷で守ってくれた。で、そのあと目覚めさせて尋問して、大我の居場所を突き止めたんだ」
慎太郎の言葉に、それなら良かったと大我は息をつく。
「それで…連れ去られた経緯は? 怖いんなら言わなくてもいいけど」
樹が静かに訊く。
「いや、いつも通りに散歩してたらな、急に後ろから誰かに布で口を覆われたんだよ。それで頑張って抗ってたら、だんだん眠たくなってきて。意識を失ったんだと思う。で、気づいたらあそこに閉じ込められてたってわけ」
「それなら、吸入麻酔薬みたいなもんを嗅がされたんだろうな」
北斗は顎に手を当てている。
「ああ、でも衣食住は一応確保されてたよ。身体検査とか、魔力の実験とかはされたけど…。みんながあいつらを倒してくれたんでしょ?」
「うん。警察が今捜査してる」
高地が答えた。
理化学研究所の建物に成り代わっていた「ガイル」なる組織は、所長であった男をストーンズが倒したことにより基幹を失った。
そして、バラバラに逃げている数人のスタッフたちを警察が追っているところだ。
「でもね…本音を言うと、ちょっとだけ諦めかけた。いくらみんなだからって、助けには来れないんじゃないかって…。だからジェットとトパーズの声がしたとき、どれだけ安心したか」
大我が言って、5人の表情が嬉しそうにぱっと華やぐ。
「あ、見て、司令官からなんか連絡来たよ」
ジェシーがスマホを見て声を上げる。「えー…『悪の組織のなんとかのかんとかを担って…」
北斗が笑ってのぞき込む。「なんだって? ああ、『悪の組織の撲滅の一翼を担っていただいたこと、心より感謝しています。政府より、ストーンズに臨時報酬金のお知らせが届いたのでこれをもって通達します』だってさ」
「っしゃあ!」
樹がガッツポーズをしてみせる。「絶対もらえると思ってたぜ」
大我は苦笑してつぶやく。
「俺は連れ去られただけなのに…。5人で山分けしな?」
それに、即座に慎太郎が首を振る。「やだ。大我も頑張って耐えたんだから」
緑色の瞳と見合った桃色の瞳が、笑みを形作った。
「じゃあさ、休暇もらって俺らでどっか旅行行こうぜ! ほら、ドリームランドとか」
ジェシーの提案に、「いいね!」と北斗と高地、慎太郎は反応する。
「行きたーい。いつ行く?」
樹がカレンダーをめくりながら呼びかける。
「気が早えな」
またもや苦笑いの大我は、それでもどこか楽しげだ。
そのとき、全員のスマホの通知音がハーモニーをつくる。
「うわぁ…」
「俺らのドリームランドが…」
「いやなくなってはないから」
「ほら早く行くよ! 仕事だよ!」
「このスーパー、俺ら買い出し行ってるとこじゃん。に、フェイラー1体出没、怪我人今のところなし。…どうする? これ全員で行く案件かな」
北斗は5人を見回す。
「みんなで行こう。また誰かいなくなったら嫌だよ」
高地の言葉に、それぞれが笑顔になった。しかしすぐスイッチを切り替える。
「討伐だ!」
勢いよく飛び出していくストーンズ。
今日も街の平和は、彼らが守る——
終わり
コメント
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語彙力ないけど まじでさいこーです!!