テラーノベル
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「直美……どうしたんや……殴ったり…叫んだり……アホ?そんなん……直美とちゃうやろ……どうした?」
視線をさまよわせた夫の弱弱しい声に、もうひと押し……と自分を奮い立たせる。
「私の一番大切なものは亜優。これからもずっと亜優が一番大事。その亜優を大切に出来ない人のことは嫌い」
「嫌い……って…俺のことちゃうよな?」
「ハルくんのことに決まってるやんか。聞いてた?もっかい言おか?何回でも言えるっ!私の一番大事な亜優を悲しませる父親なんかいらんっ!そんな人間は私の敵で大嫌いっ!私は後付けでも付録でもなく、第一に亜優のママ。それを、付録とかおまけとかどうでもええって言う人はさっさと帰って、二度と来ないで……裁判所からは……面会交流の話があるやろうけど……」
最後は憂鬱な気持ちで、小声になってしまった。
「面会交流……そんなんいらん…亜優はどうでもええって言うてるやろ」
「ほな、それでいい。二度と来ないで…私と亜優の前に現れないでっ!」
「……こんな女…俺の直美と違う」
「まだ言うてんの?私はハルくんのものではない!」
「…そんな可愛くないこと言う女はいらん……」
「それで結構っ!こっちこそ、何でもかんでも力づくの押し付け、縛り付け男なんかいらんわ、帰ってっ!!」
「言われんでも帰る…」
夫は、私と目も合わせずに帰って行く。
これでよかった……たぶん、もう彼は来ない。
幼稚な恋心を歪めたような感情しか持てない男には、永遠に愛情なんてわかるはずもない。
私に幻滅してくれたら、バンザイよ。
私は夫が見えなくなったことを確かめてから家に入ると、体温の急上昇を冷ますためにコートを脱ぐ。
そして、ポケットからスマホを出すと、母から写真が送られてきた。
「あはは…楽しそう。お手伝いか、つまみ食いかわからんね」
それは、庭でお餅つきをしている写真。
絵梨ちゃんと亜優が並んでお餅を……二人とも顔に白い粉がついていて、手も真っ白。
たぶん丸めていたのだろうけど、熱々ふわふわの誘いに負けて噛り付いている写真だった。
コメント
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私も体温が急上昇したよ! 今はホッとして力が抜けたよ、直美さんフゥ…